今回はクリスティーナ・ウォドキー著の「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」を要約していきます。MBOに変わる形で、スタートアップおよびハイテク業界でメジャーになりつつあるコトマネジメントの手法OKRの概要をまとめた本であり、代表的な導入企業Googleに勤務されていた及川卓也氏が本書の解説を務める形になっております。様々なコトマネジメントに関する理論やフレームワークを学ぶ中で、度々言及されてきたOKRについてエッセンスを掴み取ろうと考えこのタイミングで読んでみました。
「OKR シリコンバレー式で大胆な目標を達成する方法」
■ジャンル:開発管理・組織マネジメント
■読破難易度:低(前提知識不要で、OKRを用いて変容に至る企業のケーススタディーとシリコンバレーの著名人がそのエッセンスを解説するという構成で非常に読みやすいです。)
■対象者:・目標管理制度について興味関心のある方全般
・不確実性の高い分野・場面でコトマネジメントに従事する方
・仮説検証・学習を組織で進めるための要諦を抑えたい方
≪参考文献≫
■プロダクトマネジメント ビルドトラップを避け顧客に価値を届ける
■アジャイルサムライ
■LEAN UX
■要約≪LEAN UX アジャイルなチームによるプロダクト開発≫ - 雑感
【要約】
■OKRとは
・OKRとはObjective Key Resultsの略称であり、Oは成し遂げたいこと(定性)・KRは成し遂げたいことが実現している状態における主要な結果指標(定量)という関係になっており、何を目指して頑張るのか・それを実現している状態をどのように計測するのかということが連動している状態になります。OKRは週単位で設定運用し、週末に振り返り、KRの達成可能性見立て→打ち手検討→次週計画反映→改善試行というサイクルを繰り返していくのが実際のプロセスになります。
・OKRの考え方はアジャイル開発におけるスプリントレビューやプロダクトマネジメントの思想に通じる所があり、時間・資源制約の中で優先順位付けをして正しい方向に仮説検証・コトマネジメントをしていく重要な役割を果たします。
・OKRはドラッカーが提唱したMBOをアンディー・グローブが応用して発明した概念です。OKRはグーグルなどスタートアップに導入され、カオスの中で変革アジェンダと財務アジェンダを管理していく際のマネジメントツールとして有効ということで注目されていくようになりました。投資サイクルという制約条件・ロードマップの運用という前提がある中で、効果的にコトマネジメントをしていく際にはMBOではなくOKRが有効というのは秩序のないスタートアップや10Xを目指すというテクノロジー業界の性質故に必然とも言えるでしょう。
■OKRがもたらす組織コミュニケーション作用
・OKRはコンフリクトや複雑な局面であっても、判断が目標・目的から外れないようにする作用があります。また、OKRはビルドトラップ(アウトプットファーストでアウトカムを意識しない部分最適)を回避し、リーンキャンバスやロードマップといったプロダクトチームにおけるコトマネジメントコミュニケーションツールとも極めて親和性が高いという性質があります。
・OKRは様々な職能横断型のプロダクトチームを適切な方向にリードする補助線の役割があります。顧客ではなく、短期の売上や株式市場を見るというのは営業や経営企画・ファイナンスの論であり、これはエンジニアやデザイナーからすると非常に嫌な話になります。ビジネスとプロダクトが同じ目線・価値観でコトを推進していく体制を構築する為にもOKRは有用で、運用プロセスにおいて戦略整合性・ロードマップとの関係性を否応なしに考えざるを得なくなるという副次的な作用もOKRの価値とされます。
■OKR運用上のポイント
・目標を掲げても達成できないのには何個かの要因があり、ゴールに優先順位をつけていない・熱意をもって漏れなくゴールを伝えられていない・やり遂げるためのプランがない(意志力ではなく具体的なToDoレベルで)・重要事項の為の時間を確保出来ていない・繰り返さずにやめてしまうの5つとされます。ストレッチ目標を設定して、都度振り返る・アテンションを高め続けるということをして初めてOKRは機能します。企業や組織の存在目的・ミッションに常に立ち返ることや戦略整合性に対して気を払い、部分最適や個人の感情や利害が入り込まないようにコトマネジメントすることがとても大切だです。OKRは四半期や月単位で達成できるものであり、チーム単位で完結・解決できるもの(外部要因に左右されない)ものに設定するのが効果的に機能するためのミソとされます。
・OKRは測定できるものにすること・顧客やビジネス成果に明確にヒットしているといえるものに設定して運用・改善し続けることが健全な風土・選択と集中を生みプロダクトマネジメントを進化させます。
【所感】
・リーンキャンバス・ロードマップといっ仮説検証型のコトマネジメントフレームワークの意味・価値を改めて考えさせられる内容でした。特に職能横断型のプロダクトチームを適切な方向にリード・優先順位付け促進する意味においてはOKRの考え方は避けて通れないと感じた次第です。OKRはKPIツリーと極めて思想的に近しいものを感じており、「正しい問いを設定して適切に学習する」・「顧客価値とビジネス成果に常に連動させて考える」といったコミュニケーション設計の観点でも凡事徹底することが大切と再認識しました。
以上となります!