今回は「コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント」要約シリーズの第五弾となります。PART5は「市場提供物の形成」ということで、これまでの議論を踏まえた製品市場戦略(PMS)の策定プロセス・サービス設計(どのような価値を表出させるか?)・価格設定戦略について記述されているパートです。
収益性という観点は個人的にとても重要視しているので、今回の内容は非常に考えさせられる部分が多かったです。
尚、過去の要約は下記です。
■PART1
■PART2
■PART3
■PART4
■ジャンル:経営戦略・マーケティング系
■読破難易度:低~中(記述量は膨大ですが、論理展開はとてもわかりやすく焼き直したものを大学の専門レベルで扱うこともあるくらいの内容です。)
■対象者:マーケティングに興味関心のある方・顧客接点を伴う業務に従事する方全般・消費財メーカーに関わる方全般・戦略策定プロセスに興味関心のある方
≪選定理由≫
・経営と現場の統合ということを個人的なテーマとして置いています。
・その中でも「マネジメントレイヤーがどのようなことを念頭に置き戦略を描いているのか・それをどのように現場に翻訳・推進・部分戦略を描いていくと一番適切か?」
ということに関心があるためです。
・関係性営業や感情マネジメントだけではうまく行かないし、かといって論理だけで解決しないのがビジネスの世界な中で、あらゆるものへの理解度を根元から上げていかないとモグラたたきのように発生する個人的な課題に対処できないと思っています。
・机上の最適な理論を自分なりに体得するプロセスを通じて、うまく現場に適合させて戦略策定・実行をして介在価値をあげたいというのもあります。
【要約】
・これまで述べられてきたブランド戦略・顧客ロイヤルティ・需要喚起等の各論の議論を統合する形で製品市場戦略を体系化するのがPART5の主題です。個人的な主観ですが、薄利多売路線が大嫌いな自分に取って(関係者全員が長期的に不幸になるという思想を持っています。)とても考えさせられるし関心毎の高い分野です。
■製品の特徴をどのように定義するか?
・「コアとなる価値⇒それを表出化する製品の基本単位⇒付加価値を増強する派生サービスやソリューション」という階層を取るべきとされます。
・加えて、常に顧客の潜在需要を満たす製品サービス開発に心がけるべきと説かれます。表出化する需要を充足させるだけでは長期的には価格競争に陥り、売手の収益性が大きく阻害される運命にあるからです。
■差別化の源泉
・製品特徴とデザインで構成されるとされ、具体的には●形態●特徴●性能品質●適合品質●耐久性●信頼性●修理可能性●スタイルなどといわれています。無形の差別化としてブランドがあり、基本的には有形無形両方の差別化を常に追求するべきとされます。
・ブランド戦略がマーケティングの範疇で大きな役割を占めるとされます。
・主に多角的事業運営をする会社に言えることですが、会社全体のブランドと製品毎のブランドそれぞれを形成し、時に統合・時に独立して取り扱うことが大事とされると説かれます。全社イメージや方針と異なる価値や顧客を想定する時は個別ブランドを前面に押し出していくべきとされています。
※全てのサービスに会社名やグループブランドを付ける会社と製品毎に独立したネーミングを付ける会社と別れます。前者の代表的なものは楽天○○などでしょうか。
■サービスの設計とマネジメント
・「元来、無形商材の分野で重要視されていたサービスが競争優位の源泉を占める迄、重要視されるようになった」という時代背景がこのパートの議論の前提にあります。
・基本的に顧客ロイヤルティの醸成に向けて、現場起点のサービス価値磨きこみを擦るのが定石とされています。サービスの大事な特徴として「顧客が実際にそのサービスを受ける前に需要を喚起・支払いをしないといけない」という側面があります。
■サービスにおけるマーケティングの重要性
・有形商材と比べてマーケティング施策を施しスケールさせるほどの市場サイズや企業体力がないケースが大半でしたが、顧客のニーズ多様化する中で「市場細分化+特定セグメントの深耕による顧客ロイヤルティの醸成」がビジネスの成功に相関するようになった現代ではマーケティング施策がサービスにおいても積極的に施されるようになったとされます。
■サービス品質の管理
・「顧客の期待価値と実際の提供物のギャップを埋めるチューニングは常に施すべき」とされます。これは伴走もそうですが、適切な需要喚起をすることの重要性を説いています。(付加価値が低く、すぐに値崩れしたり競争激化するリスクを持つサービス業においてとても大事だと個人的には思います。)
・サービス品質を構成する重要指標は●信頼性●対応力(スピードと質)●安心感●感情移入(個別対応性による納得感)●有形物(明確なアウトプット)の5つとされます。
■価格設定の重要性
・インターネットの進展により売手が多様化する中で、価格崩れや価格が変動するなどが主流となりました。そうした外部環境の影響で「競争に負けない価格を設定できるか?」コスト(原価)低減して値崩れしても収益性を保てるか?」ということは市場命題となっています。
・価格設定は6つの段階を経て決定されるとされ、
「価格設定目的の選択※企業や製品が市場で何を目指すかに起因」
「需要の判断※高価格路線・高付加価値/低価格大量拡販路線の分岐」
「コストの評価※製品特徴ではなく、顧客に提供している価値の適正価格で図るべき」
「競合他社の価格・価格・オファーの分析※相対比較で自然と製品サービスのポジショニングや路線が決まります」
「価格設定方法の選択※原価とマージンを分解し、どのような利益率を目指すか?どのように収益を経るかを画策すること」
「最終価格の選択※価格は会社ビジョンや製品市場戦略を体現するものとなるので、一貫性があるかを考慮すべしとされます」
で構成されます。
■価格はどのように適合されるか?
・地理的な要因(マーケット構成する売手の規模・購買能力により支持される価格帯は異なります)や差別型なのか販促型なのかといった製品サービスをどのように市場に浸透させ戦略ロードマップを描くかによる影響も受けるとされます。
※価格弾力性の高い顧客は全体の15~30%に満たず、切り捨てるという選択肢もあるという示唆が優れていると感じました。スイッチングコストがあり、取引がスケールしにくいから注力しないということです。
【所感】
・全体感としてロマンとそろばんの話だなとこのパート全体を読んで感じました。
・顧客価値を磨きこみに行きながらも、企業ですので経済合理性を担保しないと持続発展は出来ない(上場企業の場合は投資家からの目もあるので健全な発展予測と社会価値を追求するという追加のオーダーも増えます)という二兎を追うような行為ですので、とても難しいのは当たり前だなと内省しました。
・二律背反のように見える命題に常に取り組みながら、自分個人が対峙する顧客や市場への付加価値を磨くことは当然として組織・領域・サービス全体に働きかけるような論点提起・仕組み化などを同時に行わないと自分の介在価値はスケールしない(単調増加しかしなくて、イマイチということです。)のだなと読みながら思った次第です。
・市場細分化や製品市場戦略が何で構成されるのかという理論に明るく、実践することが出来るようになることは、企画機能にいない現場のマネジメント最下層の自分でも非常に役に立つという実感を持てました。
以上となります!
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