雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪競争の戦略≫後編

前回に引き続き競争の戦略を要約していきたいと思います。

Ⅱ部・Ⅲ部は具体的な実践になるため、経営学を読んだことのある人にはかなりなじみのある部分も出てきて読みやすくなります。

前回のまとめはこちら↓

 

ty25148248.hatenablog.com

 

「競争の戦略」

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Ⅱ 業界環境のタイプ別戦略

 

多数乱戦(競合がたくさんいる)・先端業界(新規)・成熟期へ移行する(飽和している)・衰退期(オワコン・撤退障壁と戦っている)という4分類の業界における企業の競争力学・どんな原理原則で企業が行動するかを網羅的にまとめています。

 

●多数乱戦業界について 

⇒どの企業も利益率に旨味がなく疲弊している状態、理由は

①経営人材や経営資源がその業界の企業に不足している

(つまり統合しようとするときに必要な経営パワーが足りないということ。)

②業界内の企業が近視眼的な経営に甘んじている

(長期的ではなく短期的な目先だけ考える経営をしている。)

③その業界自体があんまりイケていなくて注目されない

(つまり経営人材が入り込んできたりビジネスチャンスになるインセンティブがない。)

 

●先端業界について

全体最適化ができていないからどうしても労働集約型になる、業界のルールが定められておらず自分たちのやり方を模索しているフェーズにあるため「スピンアウトベンチャー」が多発する。(メーカーやIT業界の成り立ちにスピンアウト多いのは構造的要因のようですね。)

 

●成熟期へ移行する業界について

マーケット環境では旨味がなくなるため流通業者や代理店が大きな力を牽引するようになる。(利益率の低い事業・マーケットの代理店移管は身の回りでもあるので納得感ある分析です。)

・この成熟したマーケットにおいては生産工程の改善が鍵になる(つまりコストを下げて売ることで利益率を上げることが手っ取り早くなる。)。業界の成熟化に伴い、買い手がリテラシーを獲得する中で肝になるのは顧客の選定(どこが旨味があるのか)・自社の強みの言語化・価値の磨きこみ(何で勝つのか)を規定して方針を決めることが売手側の戦略となる。

 

●衰退期

⇒リーダーシップを発揮して小さいマーケットを完全に制覇する・拠点確保戦略(二ッチトップとなり一定のシェアだけ守る)・刈り取り戦略(利益刈り取って逃げ切る)など行動が大別化される。

 

※このあたりの文脈は大学の経営学の授業を思い出して懐かしいなと読んでいて思いました。。

 

Ⅲ 戦略デシジョンのタイプ

市場を開拓していく中で企業はどこに戦略の要を取るか、そしてそれが市場にどのように相互作用するのかを網羅的に記載したのが三部です。

 

垂直統合

⇒競争優位を構築するものとして製販など企業の機能を一気通貫で提供するか代理店など一部機能を市場に委ねるかどうかの是非について論証しています。

垂直統合することは需要予測を容易にしたり規模の経済を享受できる観点では魅力的ではあるものの、会社全体としては市場の影響を受けることが増えるようになるから経営管理の打ち手はより難しくなると言える。

※製販統合することはある意味うまくいかなくても他部門が救ってくれるという慢心を招きかねないものではあるものの、一方で市場のニーズをすぐに反映できるようになったり差別化することができるようになる幅は広がる。この天秤をかけて統合している会社が多いのだと。

★川上から川下まで一気通貫の経営をしていても経営の論理や急所がことなる場合があるということは陥りがちな錯覚のようです。いつ役立つのかわからない知見ですが印象に残りました。

 

●キャパシティ拡大戦略

⇒生産設備を増強して生産能力向上でマーケット拡大・マーケットシェア拡大を広げるというもの。設備投資は将来の需要予測を基に行うものなのである種のマーケットシグナル(競合に対するサイン)にもなる。リスクと収益性の天秤にかけて企業は行動するとのこと。※製造業はキャパシティ拡大戦略中心ですね。

 

●新事業への参入戦略

⇒市場要因が特定できていて不確実性のない市場に新規参入することは意味がない、既存業者により答えが出ている。新規事業に関する議論はどうしても性質上それを実行する財務や人事の話にフォーカスされるけども大事なのはそれ以上に事業が成り立つかどうかという点だとのこと。

 

 

【所感】

正直、今の年次・段階で直接役に立つのがどれくらいの範囲かはわかりません。

しかしながら原理原則を自分の言葉で読み解くことに意味があるかなとは思っていました。今年になってから原典を自分の体験・経験と紐づけて読むことに価値を見出しているので読む速度は激減しましたが糧になっている感覚は強いです。

マーケット構造に関する基本的なフレームワークは理解しておいて損はないなと思うので頑張ります。

 

 

以上です!!