雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪トヨタ生産方式≫

今回はトヨタ生産方式の原理原則についてまとめた本を要約します。

トヨタ自動車工業の副社長大野氏が1978年に著した本です。

実は3年前に読んだことがあるのですが、当時の僕には製造業や会計・経営の知識が圧倒的に不足しており内容をうまく捉えることが出来ず久しぶりにリベンジした本です。

製造業に従事する人であれば当たり前のように頭に叩き込まれている「トヨタ生産方式」がどんな原理でどのような着眼点を起源に誕生したか?という観点で記載されています。会計学の知識や製造業の前知識があるとかなり読みやすいと思うのでおすすめします。

 

 

トヨタ生産方式

トヨタ生産方式――脱規模の経営をめざして | 大野 耐一 |本 | 通販 | Amazon

■ジャンル:生産管理・経営学

■読破難易度:中 このジャンルの前知識があれば読解は非常に容易です。前知識がないと活用イメージが沸かず読みにくいかもしれません。

■対象者:生産管理に興味関心のある方・自動車産業の発展の歴史に興味関心のある方・収益観点を意識した経営学に興味関心のある方・「トヨタ生産方式」の定義を理解したい方

 

 

 

【概要】

トヨタ生産方式多品種少量生産で採算が取れることを目指した生産方式

・日本は戦後アメリカに追い付けおいこせでアメリカ流の経営学を持ち込んで何とか改善することで追い付こうとしてきた(低単価×長時間労働を差別化要因のテコにしてきた。)

⇒この現状を脱却すべく誕生したのがトヨタ生産方式

 

トヨタ生産方式を貫く二本の柱≫★基本原則

■ジャスト・イン・タイム…必要な部品が必要な分だけ必要なタイミングに創られる工程を指す(※在庫を極力抱えないことで財務体質を良くする狙い)

・これを実現する為の発想の転換として後工程が必要な分だけ前工程に要望をしていく

という方式がある。それを示す伝達ツールとして「かんばん」を各工程間で回すことで生産量をコントロールしようという思想。

要は後ろから逆算していくことで無駄を省くということ。

自働化…作業工程において自分が担当する工程で異常があれば担当者自身がストップボタンを押してラインを止めることでタイムリーに問題に解決できるようにするということ。機械のようにプロセスを分解して人為的作業もすぐに問題を洗い出し対処できる管理システムを構築したということ。

生産管理の現場においてひとりひとりの生産性最大化にするための大事なシステムといえる。

 

トヨタ生産方式により実現したい世界観は「原価コストの低下」

※競争環境下で如何に収益を上げながら勝ち抜いていけるかは損益分岐点を如何に小さく設定できるか、即ち稼ぎやすい体質を如何に作れるかにかかっているということ。

 

トヨタ生産方式の標準作業表の3要素≫※標準化/不備0が成功のカギ

■サイクル・タイム…1個ないしは1台を何分何秒で作るかの時間

■作業順序…時間の流と共に作業をしていく順序のこと

■標準手持ち…作業をしていくために必要な工程内の仕掛け品

3要素を可視化することにより生産が効果的に行われるような仕組みを構築した。

 

 

【所感】

・直近で読んでいた「ザ・ロード」や「リエンジニアリング革命※後日ブログに書き起こす予定です」に近しい内容であった為、前知識も豊富にありかなり読みやすかったです。会計やロジカルシンキングのスキルも昔とは段違いでしたので、ある意味自分の成長を感じながら読書していました、、

「原価低減」というクリティカルな命題を設定して、その遂行の為に既存の製造原理を根本から疑いトヨタ生産方式を確立した先見の明には畏怖の念を感じずにはいられませんでした。

多品種少量生産という未来の需要を先取りするかのような体制の確立(在庫を極力持たないことにより損益分岐点を低く設定⇒低経済成長時代の中でも黒字化を実現できた)もこうして振り返ると改めて驚かされますし、ある意味トヨタの成功が職能別組織・大量生産方式からの脱却という意味で国際的に大きな影響を及ぼしたのは間違いないだろうなと思いました。

・最近、「収益観点を意識した事業運営」というテーマに関心があり、このあたりのテーマ感に現場で顧客折衝をしている自分が何らかの見解を持ち、筋のいい打ち手を組織全体に仕掛けていくことが出来たらバリューが高いのだろうと思っています。そんな問題意識にもピッタリの内容で色々と考えさせられる内容でした。

(知識がないと想像できないとはよく言われる話ですが、最近よく痛感します。会計・経営等の知見が増えることで思考の引き出しが増えるという機会は多くまだまだ自分のアウトプットは粗いなと反省です。)

・本筋からは逸れますが僕は就活生時代、製造業の会社に対してあまり深い興味関心を抱かず接触をすることも少なかったのですがこうした文献を読むとモノづくりの世界は奥深いし素晴らしいなと考えさせられます。(当時の自分には知識不足&身近に製造業の会社があまり多くなかったから関心がなかったのです。。)過去の不勉強を呪いながらこの本を貪るように読んでいました。とても面白かったです。

 

以上となります!!