雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪文明の衝突≫

今回は文明の衝突を要約していきます。

冷戦以後の国際関係(ソ連崩壊・西欧中心主義の崩壊)を整理し、未来予測した本です。21世紀に中東地域で発生した紛争など一部の事実を予言したとして定期的に話題にされる国際政治の本です。

 

文明の衝突

文明の衝突 に対する画像結果

■ジャンル:政治学

■読破難易度:中(世界史・宗教に関する基礎知識があると読みやすいと思われます。地域や文明を度々カテゴライズするので、その区分の背景が理解できないと読みづらさを感じると思われます。)

■対象者:・国際政治・国際関係に関して興味関心のある方

     ・宗教・イデオロギー対立がもたらす影響について興味関心のある方

     ・西欧中心主義に関して理解を深めたい方

 

【要約】

・本書は冷戦(共産主義VS資本主義)が崩壊し、イデオロギーによる対立ではなく、民族意識の再認⇒文明間の衝突という新たな対立が引き起こされるに至った国際情勢を描写し、予測される未来シナリオを展開する本です。

・冷戦はソ連という大国を崩壊させ、東欧諸国の民主化西欧が世界を牽引する時代の終焉などをもたらしたとされます。そうなることで、第三勢力として位置していたイスラム東方正教会勢力・その他(主に中国インド)の力が相対的に向上し、文明間の衝突が引き起こされやすくなったということを指摘する所から始まります。

 

■冷戦以後の世界の対立構造

共産主義VS資本主義」というイデオロギーによる対立終結した後に世界各国では自国のアイデンティティを再考するに至り、民族意識宗教意識が高まり、対立の溝の間で紛争が多発するようになりました。東欧地域の民主化アフリカ大陸の独立中東地域の紛争などはこうした文脈が影響しています。

カトリック系(西ヨーロッパ)アメリヒンドゥー系(インド)中国日本ラテンアメリカイスラム東方正教会系(主にロシア)などが群雄割拠する構図となりました。特にキリスト教※主にアメリカVSイスラム教」の対立は深刻です。西欧中心の世界線への反発としてイスラム教勢力が自分達のアイデンティティを認識し、暴力による働きかけを行うようになり、その影響力が相対的に高くなっているのが冷戦以後の世界の構図です。

 

■二大宗教勢力の影響力

・1900年には0.2%であった無神論は現在では世界の3割を占めるまでに拡大しているとされます。それでもなお、二大宗教勢力であり、改宗のインセンティブを強く教義にもつキリスト教イスラムの影響力は顕在です。特に、イスラムはその基盤母体の地域が人口増加を続けている為、長い目で見た際に世界に大きな影響力を発揮する宿命にあると言えます。

物質的に豊かな世界を数百年がかりで志向してやっと成しえたと思ったら、今度は精神的な充足を目指した闘争に翻弄されるようになるというのは歴史の悲劇と言えます。

 

■異文化間の衝突に纏わる構造的な問題

西欧文明は長らくの歴史故に「自分達が世界の中心で啓蒙していくことに使命がある」という傲慢とも言える価値観を持っているとされます。これは非西欧文明からすれば現代版帝国主義でしかないです。ロシア・日本のように中立的な関係を志向する文明もあればイスラム圏・中国のように明確な対立姿勢を目指す文明も存在します。

イスラムの難しい所はオリエント地域の歴史起源からも明らかなように、中核を担う国家が不在で長らくイスラム圏内でも衝突が絶えない所にあるとされます。これは暴力による支配・専制政治の基盤が古来より脈々と受け継がれてきている政体の性質の影響はあると言わざるを得ないでしょう。

※皮肉にも西欧由来の資本主義経済を導入し、物質的に豊かな社会を広範囲で形成しなかったつけが今になってもボディーブローのように効いて、真っ当なフォームで対峙できないとも言えるとのこと。

 

 

 

【所感】

・主張をわかりやすくする為と思われますが、同じ論調を手を変え品を変え何度も繰り返す展開と過度なカテゴライズ化から少し読みづらさを感じた本でした。歴史的な構造の存在を指摘し、未来永劫続く溝の存在を明らかにした観点で本書の功績は偉大であるのは間違いないですが、どこまで行っても西欧中心主義(著者が西欧世界の人なので当たり前です笑)の毛色は強いなと感じました。

・本書で展開される構造があるということを下敷きにして歴史や宗教を原典から学び、自分なりに体系化・各々の主張を理解するということをすべきと感じました。それをせずにこのテーマを大々的に論じるのは非常に浅はかであり、避けるべきと理解できたのは大きな収穫であったと感じます。

・そして、皮肉にも西欧由来の進歩主義・科学技術・資本主義経済のメカニズムが非常に優秀なマネジメントシステムでもあるということが再認識出来たと感じました。財政出動・税制・金融理論などを駆使して市場経済の足りない部分を政府が保管していくことで、物質的・精神的に豊かな世界を志向できる体制を整えるというのは大事だということですね。

 

以上となります!

定期的に本を要約して投稿しています。面白いと思って頂いた方は「読者になる」を押していただけると嬉しいです。