今回はバーバラ・ミント氏の「考える技術・書く技術」を要約します。
ビジネスライティング分野の古典と名高く、スタッフ職やコンサルの登竜門的書物として有名です。自分自身がビジネスライティングは勿論、クリティカルシンキングについて強い課題感を抱く中で本書を読むに至った経緯となります。
「考える技術・書く技術」
■ジャンル:思考法
■読破難易度:中(豊富な図解と事例がある為、読むこと自体はそこまで難しくないです。)
■対象者:・ビジネスライティングのお作法を身に着けたい方
・ピラミッド原則について理解を深めたい方
・他人への情報伝達・共通認識化に課題感をお持ちの方
【要約】
・本書はピラミッド構造というフレームを用いて、「考える」「書く」「問題解決する」「表現する」の4分野に対する体系だった原理原則について記述されております。
■ピラミッド構造について
・脳は一連の事象に「共通の目的を見出すと、グループ化して理解する」というステップを踏みます。脳の構造を遵守し関係性を定義することが構造化であり、ピラミッド構造(ロジックツリー)という形式で表現されます。
・人間は大量の情報を処理しようとする際に、前後の関係性や共通項の把握・ストーリー形成を通じて理解・認知します。その為、断片的かつ背景知識のない情報を列挙して情報伝達するのは無理があります。本筋と関係ない情報を散りばめることは認知コストを大きく上げるので、重要な構造に寄与する要素以外は極力遮断するのが情報伝達の基本原則とされます。
■書く技術
・脳の構造に忠実な情報伝達をする為に、ピラミッド構造の鉄則を守ることが絶対感覚であるとされます。
・どのレベルであれ、あるメッセージはその下位グループ群のメッセージを要約したものでなければならない
・各グループ内のメッセージは同じ種類のものでなければならない
・各グループ内のメッセージは論理的な順序で配置されなければならない
・ピラミッド内部の構造は縦横に明確な関係性・意味を持たせることが重要であり、下記が原理原則とされます。
・メッセージは縦方向に関連性を持つ(Q&A形式)
・頂上ポイントは読み手の疑問に答える
・導入部は読み手に疑問を思い出させる
・これらは文脈や背景に依存することなく、読み手認知コストを最小化し問題解決・問題発見に繋げる為に遵守すべきビジネスコミュニケーションの鉄則と言えるのでしょう。
■考える技術
・構造を明確にし認知コスト最小化に努める為に下記いずれかの順序で思考・記述するのが基本です。
・時間の順序(自分の考えを述べる時、プロセス・フローとして図示するならば)
・構造の順序(自分の考えを述べる時、構造にコメントするならば)
・重要度の順序(自分の考えを述べる時、分類を行うならば)
・行動の考えを要約する場合、それらアクション群を実行することにより直接得られる結果を述べるのが基本であり、状況の考えを要約する場合、それらポイント群の類似性の意味を述べるのが基本原理に忠実とされます。
・ピラミッド構造(ロジックツリー)形式でアウトプットする為に、考えの類似性に着目して要約すること・行動や状況の共通項を形成して階層を揃えることの2点が原理原則とされます。※具体的な思考プロセスや事例は本書に詳しく記載されているので割愛します。
■問題解決の技術
・問題解決の為には上記思考と記述の基本原則を順守した上で、①問題を定義②問題分析の構造化のステップを踏むことが絶対感覚とされます。表出化した事象を闇雲に調査分析していくのではなく、解くべきお題(論点)を設定し、その為に全体構造の特定を怠らないのが必要です。
・問題を定義する為に抑えるポイントは下記とされます。
・問題が発生した分野を目で見えるように図式化せよ
・今までの安定を覆すような出来毎を述べよ
・望ましくない結果(R1)を明かにせよ
・望ましい結果(R2)を具体的に述べよ
・その問題を解決する為に今までの何らかのアクションがとられたかどうかを明らかにせよ
・分析の目的、すなわち分析により答えるべき疑問を明らかにせよ
・課題設定と掘り下げポイントを間違えると不毛な調査や網羅的な調査、決めつけファーストになってしまいます。その為、全体構造化や論点整理が重要でミスできない初期設計になります。論点設定の際はイエスノー形式となる問いを立てることが基本であり、論点設定を間違えると何をえたいのかわからない調査と分析が山積みになってしまうとされます。
■表現の技術
・難解な言葉を盛り込むのは伝えるという本来の役割を放棄しており、虚栄心を満たす愚かな記述とされます。文章を読み進めていく中で、読み手がイメージが浮かび上がるように平易な言葉での記述に努めるのが原理原則です。
・わかりやすく文章表現するには頭にあることをそのままつらつらと記述するのではなく、その内容を再統合して視覚に訴えるような形でイメージが出来る順番に組み立て直して記述することが重要です。
【所感】
・「認知コストを最小化し、文脈・背景に依存せず物事を正確に伝えるお作法」が自分には圧倒的に不足していると痛感させられました。ロジカルシンキング・クリティカルシンキングは外来語のようなもので、ある分野において言語規則を弁えない思考や表現はご法度であるということも再認識しました。
・「頭の中で考えたことをそのまま記述するのではなく、読み手がイメージ化出来るように構造を再構築して記述する」という絶対感覚はいつ如何なる時も欠落しないように気を付けることが重要でこれが出来ないと経験のないテーマに対してバリューを発揮することが出来ず、職種や事業などのピボットをして連続的に成果を出していくというのが難しくなるのだなと感じました。その意味において本書で体系化された基本原理は繰り返し実践しておかないといけないと痛感した次第です。
・本書を通じて、問題発見・問題解決におけるフレームや着手するステップを学び、「デリバリーや組織マネジメントの経験・価値観に偏重であった自分は意図せず網羅思考が癖になっていたのだ」と気付かされました。全体構造を洗い出し、インパクトや実現可能性から優先順位付け・論点化するという一連のお作法が欠落していたのです。現状を認識できたので、補う為に意図して訓練・経験を積んでいくことでこれまでの経験やアプローチ方法にレバレッジをかけることは出来るのだろうと感じ、何度か読み返して血肉にすると共にその先にある状態が非常にワクワクするだろうなと思いました。
以上となります!