雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪マンキュー経済学Ⅱマクロ編②≫

今回は前回に引き続き、N・グレゴリー・マンキューのマクロ経済学について要約していきます。後編は第4部~7部を要約します。第4部は貨幣システムとインフレのメカニズム・第5部は開放経済のマクロ経済理論・第6部はケインズ経済学に代表される財政政策を用いた総需要に対する経済政策・第7部はマクロ経済を取り巻く論争についてという構成になっています。中央銀行・政府が市場の需給曲線にどのように介入し、健全な経済活動を生み出していくか?」ということが後半の主なテーマです。

 

尚、前編の要約は下記。

■要約≪マンキュー経済学Ⅱマクロ編①≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

■マンキュー経済学Ⅱマクロ編

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■ジャンル:経済学

■読破難易度:低~中(大学の経済学部用の教科書として作られているため、とても読みやすいです。カラー刷りで図も豊富にあり、経済学の概念を1から説明しています。)

■対象者:・政策立案・金融理論に興味関心のある方

    ・国際経済・国の競争優位に興味関心のある方

    ・経済学を学びなおしたい方

 

【要約】

中央銀行の役割

中央銀行は銀行システムを監督し、経済における貨幣流通量を調整することで適切な市場売買を促進する警察のような役割を持ちます。中央銀行は銀行間の取引促進をする「銀行の銀行」としての役割や金利政策などに代表される金融政策の立案・実行の主体者としての役割を持ちます。時には国債の売買への働きかけの公開市場操作なども戦略オプションに組み込まれます。国債経済における貨幣流通量の半数近くを占める為、「国債の売買をすることで経済全体に働きかけをする」という財政政策のような動きをとることが出来るのが特徴です。

 

■インフレ

インフレは貨幣の価値が下がっている状態でCPI(消費者物価指数GDPデフレーターにより図ることが出来ます。長期的に見ると財に対する割高感を招き、需要冷え込みを招くことになるので良くない状態です。

・インフレは「貨幣流通量が平均よりも上回り、財を手に入れる為に払わないといけない貨幣が増えすぎる状態」ということになります。その為、中央銀行は資本に対する利率を操作する為に、公定歩合の操作や公開市場操作により手を打つことになります。政府は税収や政府支出をコントロールすることで市場に働きかける財政政策により手を打ちます。※これが有効であるという立場を取るのがケインズ経済学です。

 

■開放経済

解放経済とは外国経済と相互作用する前提で、経済条件を考える状態を指し、マクロ経済学の大前提になります。具体的には国際貿易国を跨いだ資本市場取引を前提とする状態を指します。

・こうした国際的な取引を健全にする為に為替レートを設けて、健全な市場取引を国際的に目指しましょうというのが現在の経済学の前提となります。※投機的な動きでどこかの地域に富が偏在してしまうことはそれだけで経済活動が破たんするリスクになります。

 

ケインズ経済学

・従来の需給曲線に関する経済理論は「長期的には経済は安定化する」という解はもたらしたものの、「短期的な需給バランスの歪みに対する有効な対策を何も説明していない」という理論的な穴がを指摘したのがケインズです。

・経済を構成する中で一番重要な財である資本における利子率をやり繰りすることで、資本市場を望ましい状態にすることで経済を安定化させるのがケインズ経済学の意図する所です。

・「市場全体における貨幣流通量に働きかけをすることで需給バランス及び物価水準を望ましい状態にすることが出来る」という立場に立ち、公共事業を始めとした財政政策による政府の市場介入による需給曲線への介入を推奨しました。間接的に市場に働きかける金融政策(中央銀行が担い手)とセットで検証されるのが実際的な所となります。

 

フィリップス曲線

・マクロ経済の状態を測る指標としてインフレ失業率があり、これらはトレードオフの関係にあることが多いです。「インフレ率と失業率は負の相関にある」というのがフィリップス曲線の意味する所です。即ち、失業が少ないということは経済の総需要が多いということで必然的にインフレを引き起こし、逆もしかりということを述べています。ミルトン・フリードマンがこの理論を大成させ、諸説はありますが現在も有効な理論であるとされています。

 

 

【所感】

・後半は非常に教科書っぽい構成になっており、大学時代の授業を思い出しながら読み返していました。アメリカの経済学部生を主で想定している為、20世紀の政策論争などについても言及されている点はユニークでした。

・全体を読んだ感想としては「中長期的には政府の市場介入の政策は何も意味をなさず、せいぜい短期的に状況を改善する為の手段としての金融政策と財政政策でしかない。それだけ市場の競争原理は強い力を持つ」ということかなと感じました。

・こうした特性からもマクロ経済という学問は金融機関に勤務する方公共政策立案に関わる方に非常に役立つ学問であると言えるでしょう。裏を返すと民間企業に勤務する自身にとっては国際経済や各国の政策の意図を理論的に理解する参考指標程度でしかないとも言えると思います。※とはいえ、マクロ経済理論の発展形の公共経済学については面白みを感じる為、どこかでしっかり勉強したいなと思います。

 

以上となります!