今回は旧約聖書要約シリーズその2となります。
モーセの十戒に忠実に運営をするイスラエル王国の歴史を紐解いていくパートとなります。有名なヨシュア・ダビデ・ソロモンなどが登場してくるのも特徴です。「唯一神を信仰する」という宗教の根底に流れる思想を加味して読んでいくのがいいです。
※旧約聖書要約その1は下記。
■要約≪旧約聖書①≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■旧約聖書
■ジャンル:哲学系
■読破難易度:中~大(物語調なので読み進めること自体はそこまで大変ではないですが、全部で1500ページ程の超大作であり、1週目はとにかく時間がかかると言われます。)
■対象者:・人類の起源について興味関心のある方
・宗教の構造・思想に興味関心のある方
・ヨーロッパ社会の理解を深めたい方
【要約】
・今回は旧約聖書前半を形作る6つの短編集を簡単に取り上げます。
■申命記
・ここまでの聖書を牽引してきた主人公のモーセが死に、ヨシュアへ預言者の地位が引き継がれていきます。ここでヨルダン河を渡り、儀式を通じて神への信仰を表明する場面の描写が存在します。以後、前提となる「エジプト時代の奴隷的生活から解放した神を敬う」という構図が続きます。
■ヨシュア記
・預言者モーセの遺言を引継ぎ、ヨシュアが「約束の地」を目指して征服していくパートとなります。以後、中東地域の諸民族の戦争描写が多くなります。完膚なきまでに武力で制圧していく様は非常に残酷です。ヨシュアが制圧をして、土地を分配するまでを描きます。
■土師記
・ヨシュアの死後、有力諸侯が群雄割拠するという構図が長く続き、イスラエル人を「士師」と呼ばれる英雄達が救う描写が中心です。正直、登場人物と戦争の歴史を列挙している要素が強く非常にわかりづらいです。
■ルツ記
・旧約聖書の中で最も短いパートです。ルツという人に纏わる神の愛の深さを表現するシーンです。この記の最後に超重要人物ダビデが登場するのがポイントです。
■サムエル記
・上下巻である重要な物語です。モーセ・ヨシュアの系譜の預言者サムエルが登場します。イスラエル王国をサウルが統治をし、話の途中でダビデに系譜が引き継がれていきます。以後は「エジプトの服従から救ってくれた神へ永遠に捧げものを捧げて信仰心を表明せよ」という思想が色濃くなります。
※個人的にはイスラエル王国統治の歴史を記述しており、サウルとダビデのやり取りが非常に多く、物語要素も強い為とても面白く読めるパートです。
・サムエル記にてダビデは聖地エルサレムを統治し、イスラエル国とユダ国の王になります。
■列王記
・こちらも上下巻のある長編物語です。ダビデの後継者ソロモンから南ユダ王国と北イスラエル王国の王の治世を記録したパートで、ここで400年の歴史が一気に進みます。ソロモンは統治の才能があり、地方に知事を置くなどして偉大なイスラエル国家を形成しました。尚、この時代から民族⇒王国へ国家単位がシフトしています。ソロモン王は主の為の神殿の建築を計画するなど後世に大きな爪痕を残しました。
・後半パートでは世界史の教科書にも出てくるアッシリア王国やバビロンが登場し、中東の歴史書物としての側面がより強くなります。ユダ王国はエルサレムで神への反逆行為を繰り返すようになり、戦争にも負けていくようになります。その結果、バビロン捕囚と呼ばれる惨劇が起こります。
※「神の加護により統治が出来るだけの愚かな民なのに、反逆を翻して痛い目に合う」ということを教える構造がここに存在します。
【所感】
・今回のパートは中東地域の歴史書としての側面が強かったと感じます。
・「人類を創造した全知全能の神に祈りを捧げることで愚かな人間もまともに生活できるようになる」という前提の基、旧約聖書の話は展開していきます。そこには「絶対的な権力・権威を肯定する」という構図が存在し、「王は神の子孫であるから支配の妥当性がある」という王権神授説や絶対王政に繋がるような思想が垣間見えます。ある意味、人間の根源的な欲深さを体現しているということかもしれません。
・無神教の自分からすると、時に神が激昂するシーンは「全知全能なのに非常に感情の起伏が激しい御方なのですな」とツッコミを入れたくなるシーンも多数存在しました。キリスト教の聖典、新約聖書パートまで読み通してからもう一度、各物語の意味を読解するというプロセスが必要だなーと感じました。
以上となります!