雑感

読んで面白かった様々な分野の本を要約しています。主にプロダクト関連領域・社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)。

■要約≪法の精神 第六部≫

 

今回はモンテスキュー「法の精神」を要約シリーズその6となり、最終回です。

「法の精神(下)」の収録内容で、第六部は主に「フランス封建法」にフォーカスしていきます。

※参考 過去の要約※

■要約≪法の精神 第一部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第二部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第三部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第四部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪法の精神 第五部≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■法の精神(下)

 

■ジャンル:政治学

■読破難易度:低~中(明快な文体なのでとても読みやすいです。ただし、古代ローマギリシアの歴史の引用が多い為、周辺知識が足りないと部分部分で置いてきぼりになるかもしれません。)

■対象者:・世界の統治体制の歴史について興味関心のある方

     ・政治と法律の関係性について興味関心のある方

     ・立法・行政・司法の役割について理解を深めたい方

 

【要約】

・第六部は西ローマ帝国崩壊以後、フランク王国成立の成立・発展までの歴史を辿りながらその中で法律というマネジメントシステムを構築して、「国王が広大な地域を統治するに至るプロセス」を分析していくのが主な内容です。

 

■法律による裁判が実行されるに至る歴史

・古代~中世までは多くの文明では宗教道徳基盤に基づいた取り決めが大半で、せいぜい当事者間で利権を巡り、熱湯での潔白証明や決闘裁判をするという程度のものでした。現代で民事裁判刑事裁判と区分されるような、「司法機関取引権利に関わるもの全般に関して責任を負い、取り決めを専門として行う」構図が完全に出来たのは近代以降とされます。

法律による取引判断ということにおいて最も古来より歴史があり、発達していたのはフランスとされます。宗教道徳慣習による判断(ローマ法が先進的なものとして多くの文明において長らく運用されていました)から「立法機関が責任を持ち、明文化した法律をベースに専門で責任を負う司法機関が法律に基づき裁きを下す」構図はフランスが体系化したとされます。

封建領主教会が慣習や宗教道徳に則り、裁判を行うという構図がヨーロッパ社会では長らく当たり前として定着していきました。これは法による統率の必要性が増した君主制国家のフランスで最も検証され、近代化してきました。

 

■国王と教会・封建領主の関係

カール・マルテルピピンカール大帝フランク王国の基盤を気づいた国王とローマ教会の関係性についての言及があります。この時代はまだまだ国王単独の権威・影響力がない時代であり、キリスト教の権威ローマ教会の支援なしには物事が成りゆかない世界でした。(ローマ教会の権威を保つための傭兵的な立ち位置で、フランク王国は領土を拡大したので、持ちつ持たれつの関係です。)

・幾ら中央集権をしても国王が広大な地域を統治するのは不可能ということで、土地という区分で分割した地域を封建領主に委任して、封建領主を統治することで国の統率を図るという方法が制定されました。その封建領主を身分化し、「世襲で半永久的に存続するようなシステム」として考案されたのが貴族制度でした。

・なので、この時代に公正公平に物事の判断をするという方針の元に(間接マネジメントをしないと国や社会生活が成りゆかない為)、あらゆる取引を決める法律というシステムが構築され、法による統治が発達していきました。

 

封建制成立の過程

・土地に基づき、身分主従関係を規定し、「土地を与える代わりに国に貢献するよう定められた役職を全うすること」「国王に忠義を捧げる」という封建制の構図は古代~中世のフランク王国の安定基盤を形成しました。これは鎌倉幕府「御恩と奉公」の関係に近しいものです。

・土地を授けられた人の身分を保証し、世襲でその権利・身分を引き継いでいくという形で貴族制度が発展しました。なので、それを支える仕組みとして婚姻関係を重視したり相続制度などの法整備が進みました。これなしに君主制貴族社会はなり得ませんでした。

 

【所感】

歴史を紐解き、複数の文明を比較考察することで「法律」というマネジメントシステムの制定方法と運用方法について体系だった論を構築した所モンテスキューの功績があると感じました。その切り口・手段として風土宗教への言及、法律制定プロセス・法律を活用した具体的な統治手段としての統治制度(君主制・共和制・専制など)があるという構成です。「政体や文明の価値観により、マネジメントシステムの法律の意味合いや価値基準も異なる」ということで「法の精神」というタイトルなのだと良く理解出来た次第です。

モンテスキュー「歴史と比較というアプローチで一般化した法則を見出す学術スタイル」マックス・ウェーバーが大成させた社会科学の学問思想そのものだなーと感じた次第です。

・第六部は西ヨーロッパ社会の基盤を構築したフランク王国の気品ある振舞いと歴史の偉大さに圧巻される内容でした。キリスト教と並んで、フランスという国の歴史及び統治システムを知ることはヨーロッパ社会に流れる根本思想を理解する営みと感じ、とても考えさせられる内容でした。

 

以上となります!