雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪旧約聖書③≫

今回は旧約聖書要約シリーズその3となります。

バビロン捕囚が終わり、エルサレムへ帰還し神殿や国を復興させていく過程の記述やこれまでの書物のハイライトをまとめた歴史書・詩が主な構成となっています。ペルシア王国・アッシリア王など有名な中東地域の地名・人物が多く登場するのも特色です。

旧約聖書要約その1は下記です。

■要約≪旧約聖書①≫ - 雑感 (hatenablog.com)

旧約聖書要約その2は下記です。

■要約≪旧約聖書②≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

旧約聖書

 

■ジャンル:哲学系

■読破難易度:中~大(物語調なので読み進めること自体はそこまで大変ではないですが、全部で1500ページ程の超大作であり、1週目はとにかく時間がかかると言われます。)

■対象者:・人類の起源について興味関心のある方

     ・宗教の構造・思想に興味関心のある方

     ・ヨーロッパ社会の理解を深めたい方

 

 

【要約】

・今回は旧約聖書前半を形作る6つの短編集を簡単に取り上げます。3回の要約で900/1500ページまで到達した形になります。

■歴代記(上/下)

・歴代記は上下構成となっており、これまでの短編集の総まとめのような側面があります。過去の歴史を振り返り、サウルやダビデが台頭しイスラエル王国ユダ王国が誕生し、バビロン捕囚がなされエルサレムが聖地化されるなどの一連の流れを再確認します。

イスラエルの民に向けた教訓を示すものとされており、「民が神に従順であれば加護が下りて、不従順であれば罰せられる(バビロン捕囚を招いた)。不信仰の状態では神の加護はなく神殿と町が破壊されることを神は放任した」ということを認識させる意味合いがあるとされます。

 

エスラ記

祭司エズラの名がつけられた書で、イスラエルの民の霊や信仰に関する歴史をまとめた書物です。この時代にバビロン捕囚が終了し、ユダヤ人がイスラエルに帰国します。神殿を復興させ、敬虔な祈りを捧げることで神に選ばれた民としての結束を高めていきます。

アッシリア王国キュロスダレイオス一世など世界史の教科書にも出てくる著名な地名・人物が登場して来るため、中東地域の歴史書としての側面も強いです。

 

■ネヘミヤ記

・バビロン捕囚を経て荒れ果てたイスラエル王国の復興を目指す過程を記述した書物です。ネヘミヤが強いリーダーシップを発揮し、モーセ十戒の原理原則に立ち返り聖地エルサレムを復興させていく様が具体的に記述されています。※純粋なユダヤ人を集め、自分達が神に選ばれし民であるという結束をベースに基盤を形成していく様は「らしさ」が垣間見えます。

・異民族との戦いに明け暮れ、現実の過酷さから唯一神に救いを述べるという結論に至ったと解釈することも出来る内容です。尚、安息日の概念や神に捧げものをしないと現世も来世も罰せられるという概念はこの時に確立していきます。

 

エステル記

・ペルシア王国の后となったエステルユダヤ人)の知恵と活躍を描く書です。権力者ハマンはユダヤ人モルデガイ(王)に対する恨みを持ち、ユダヤ人を皆殺しにする計画を練ります。この時代は中東諸国はどこも専制政治で過激思想を極めています。エステルが計画をリークする起点を働かせるによりユダヤ人暗殺計画は免れることになります。尚、この時代はメディアペルシア王国など中東の有力文明が併存する状態です。

 

ヨブ記

・神に逆らう者が繁栄している現実に対して疑問を投げかけるヨブが主人公の書物です。「人間は神が創造した作品であるとして、有益であることがあるのだろうか?」という問題提起がなされます。本書では「神に逆らえないことを認識し、悪を遠ざけること」分別であるとされます。

・サタンと主とヨブの対話により神への信仰心を確かめるシーンが長く続きます。サタンと出会い、ヨブの主(神)への信仰心が純粋ではなくなったが故に、神の裁きの手が下るかもしれないという問いが立てられます。ここで、「人間が神の営みを完璧に理解しようとする行為は無理があり、神はどこかで人間を見守っている」という価値観が登場します。

詩編

・150もの詩が収録されている書物です。主に「神への賛美」を捧げる内容で大半はダビデが作成したとされています。旧約聖書で展開されてきた歴史のハイライトや大事な道徳感情を凝縮したような仕立てになっております。

・単独で大きな意味は持ちませんが価値観を広く伝播させる手段として「詩」は有効であった為、結果として歴史的功績は大きかったとされます。紀元前11世紀~紀元前1世紀までの出来事を範囲とした詩なので非常に広範囲を取り扱う書物と言えます。※活字文化が普及していない古代においてこの仕組みを整備したことは後の戯曲などの発展を見ても非常に筋が良かったことが伺えます。

 

【所感】

旧約聖書ユダヤ教)は唯一神の信仰と選民思想が根底にある考え方ですが、「ストーリーを施すことで絶対的な権力に服従する構図を人為的にもたらす宗教の力強さ」が浮き彫りになる書物が多いと感じました。故に、世界各国では宗教と政治は密接したものとして活用されることが多かったのでしょう。王権神授説や政教分離などが重要なテーマになるのは宗教が強い力を持つことの象徴です。

・「道徳教育の基盤として位置する宗教は世界各国では今でも重要視されており、その思想の根底にある背景を理解することは政体を理解することと同じくらい重要である」ということが経済学や政治学・法学などの書物を読み漁る中で何となく認識しています。その意味でも聖書を読み通して考えを受け入れるかは別として理解することは大事だなと感じています。社会科学の学問領域は密接に相互作用するということを改めて考えさせられます。

 

以上となります!

定期的に本を要約して投稿しています。面白いと思って頂いた方は「読者になる」を押していただけると嬉しいです。