今回は半年に1度まとめている「読んで面白かった本シリーズ」です。
「世の中を形作るシステムを理解したい」という好奇心から最低限の心得のある経済学をベースに古典を中心に読んできました。歴史的偉人の書物を頑張って理解しようとすることで、偉人に稽古をつけてもらう感覚で読み進めることが出来、大変でしたが充実した学びを得ることが出来たと感じています。
※直近のまとめ記事は下記。
≪下期総集編≫2021年度に読んで面白かった本7冊 - 雑感 (hatenablog.com)
≪目次≫
・経済学および課税の原理
・人口論
・銃・病原菌・鉄
・科学革命の構造
・統治二論
・古都
「経済学および課税の原理」
≪要約≫
■要約≪経済学および課税の原理(上)≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪経済学および課税の原理(下)≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・アダム・スミスの「国富論」の理論を昇華させ、政府の課税原理に関する理論も展開した古典派経済学の大家の代表作です。比較生産費説を筆頭とした自由貿易に関する考察が有名ですが、氏の真価は古典派経済学を大成させ、課税原理や政府の市場介入の余地を示唆することでマルクス経済学・ケインズ経済学の誕生に大きく寄与する考察をした点にあると思われます。
・上下巻構成で「国富論」よりもシンプルな構成なので、経済学の基本を総ざらいしたい人にとてもオススメです。個人的には物語調で明快で読み物として面白い国富論も読むことをオススメします。
※参考【国富論】の要約※
■要約≪国富論 第一編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪国富論 第二編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪国富論 第三編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪国富論 第四編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪国富論 第五編前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪国富論 第五編後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
「人口論」
≪要約≫
■要約≪人口論≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・アダム・スミスやリカードと並ぶ古典派経済学の雄の代表作です。
・「人口増加(等比級数的増加)と食料生産能力の増加(等差級数的増加)のペースに大きな差がある為、人口増加・経済発展はあるタイミングで天井を迎え、常に人口の一部は貧困に喘ぐという構図は変わらない」という原則・未来予測を中心に論が展開されます。本書の内容が批判的に検証されたことで、世界はこれだけ人口増加をすることが出来ましたし、貿易理論・金融理論・資本主義の発展がもたらされたことは間違いないです。事例や歴史的偉人の見解を痛烈に批判していく明快な論調で、経済学の造詣がなくても面白く読める本だと思います。
「銃・病原菌・鉄」
≪要約≫
■要約≪銃・病原菌・鉄(上)≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪銃・病原菌・鉄(下)≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・文明間の衝突の雌雄を決した三要素(銃・病原菌・鉄)に着目して、現在のような富の偏在を招いた世界の成り立ちを紐解くという壮大なテーマの歴史書です。上下巻構成で前半は「狩猟民族⇒農耕民族への移行に文明間のタイムラグが生まれた要因」を紐解き、後半は「些細なアドバンテージを活かした結果として、ヨーロッパ文明が世界を席巻するに至るプロセス」・「南北問題」などを紐解いていきます。
・この手の類の本では「サピエンス全史」が有名ですが、個人的には本書のほうが因果関係やデータを丁寧に説明して論が展開されるので、しっくりきました。
「科学革命の構造」
≪要約≫
■要約≪科学革命の構造≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・パラダイムという概念を提唱し、非連続的な自然科学の発展に関する法則を明らかにした本です。「人文科学・社会科学と決定的に異なる学問構造」・「教科書が発展の歴史をミスリードしている」・「自然科学に向き合う科学者が持つべき倫理観」などが中心テーマとなっています。
・自然科学の知識に乏しい自分でさえも面白く読むことが出来たので、物理学・化学・天文学・数学などの知見のある人にとってはこの上なく面白く読めるのだろうなと感じました。
「統治二論」
≪要約≫
■要約≪完訳統治二論 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
■要約≪完訳統治二論 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)
・中学校の公民の教科書に出てくるジョン・ロックの代表著作です。別名、市民政府二論です。前半は当時主流であった王権神授説を聖書の記述を引き合いにこれでもかと否定をし、人権に関する定義を行った上で後半は一般市民の政治への参画を説き、立法・司法の均衡並びに神聖さを重視する氏の考えが慎重に展開されていきます。モンテスキューの三権分立論に近しい考えをロックも提唱している点が新鮮でした。
・本書は死後含む18~19世紀の歴史に大きな影響をもたらしたとされていますが、それだけ当時としては新鮮・革命的な思想であったのだろうということが記述の丁寧さから伺えます。
「古都」
≪要約≫
・新感覚派で有名なノーベル文学賞受賞作家川端康成の代表作です。「伊豆の踊子」・「雪国」などが有名ですが、個人的には京都の四季折々の美しさの描写や主人公姉妹の対比構造が素晴らしく、氏の作品では一番好きです。
・ヨーロッパの偉人に薫陶を受ける中で「日本らしい」文化について新たに理解を深めたくなり読みました。大正~昭和前半期の文豪の作品は基本的に設定が暗く、読みづらくあまり手が伸びないのですがこれからも少しずつ読み進めて理解を深めたいと思っています。
※要約ブログはないです。
・ロシアの文豪ドストエフスキーの代表作です。いつか読もうと思い、積読になっていたのをようやく消化しました。村上春樹の作品が好きな人は一度は読んでみることをオススメします。本人も明言していますが、如何にドストエフスキーに影響を受けているかが(構成・文体・主人公の心情傾向)わかります。
・上中下巻の3部構成で合計2000ページ程度の超大作で、「神は存在するのか?」というタブーとも言えるような問いに対して3兄弟の主人公を始めとした登場人物が葛藤し悩み、見解を展開する作品です。サスペンスであり、ラブストーリーであり、歴史書でありと盛りだくさんな本です。時間をおいて再読しようと思っている本で、とにかくオススメです。
まとめは以上となります。
いずれも骨太な内容で時間はかかりますが、時代の風化に耐えた名著だけあってどれもとても示唆に富んだ内容でした。偉人に薫陶を受けることで、自分のちっぽけさを再認識し、「せめて自分の持ち場でやれることは最大限頑張ろう」と何度も自分を奮い立たせてくれました。社会科学・人文科学分野のいい所はある分野について理解を深めると芋づる式で別分野に興味関心を持つようになり、理解が深まり、興味関心が高まるという正のスパイラルが起こる所にあると思います。
歴史に残るような偉業は残せないですが、良き社会市民として自分の出来ることを最大限公私共に努めていこうと思う次第でした!
※今後も定期的に本を要約して投稿していきます。面白いと思って頂いた方は「読者になる」を押していただけると嬉しいです。