雑感

読んで面白かった本を要約しています。主に事業・プロダクト開発(PdM/UXデザイン/マーケティング)のビジネス書と社会科学(経済学/経営学)・人文科学(哲学/歴史学)の古典。

■要約≪ローマ人の物語6≫

 

今回は塩野七生氏のローマ人の物語を要約していきます。6は「勝者の混迷」の上巻であり、紀元前133~紀元前78年の混沌とした時代を描きます。ポエニ戦争終結し、マケドニア王国・カルタゴが滅亡しヨーロッパ世界に圧倒的な覇権をもって君臨するローマ帝国の様相を呈した時代は内乱が絶え間ない時期でした。上巻ではグラックス兄弟の改革・ガイウス・マリウスの台頭・同盟者戦役勃発・ルキウス・コルネリウス・スッラの台頭までを描きます。

 

ローマ人の物語6」

ロ-マ人の物語 6 / 塩野 七生【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア|オンライン書店|本、雑誌の通販、電子書籍ストア

■ジャンル:世界史・歴史小説

■読破難易度:低(非常によみやすい文体で書かれており、一部物語調なのでサクサク読めます。世界史の教科書や地図を手元に置いて読むとわかりやすくなります。)

■対象者:・ヨーロッパの歴史について興味関心のある方

     ・ローマの栄枯盛衰の変遷を詳しく理解したい方

 

ローマ人の物語1~2(ローマは一日にして成らず)は下記≫

■要約≪ローマ人の物語1≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語2≫ - 雑感 (hatenablog.com)

ローマ人の物語3~5(ハンニバル戦記)は下記

■要約≪ローマ人の物語3≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語4≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 ■要約≪ローマ人の物語5≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

≪参考文献≫

■ローマ人盛衰原因論

■要約≪ローマ人盛衰原因論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

グラックス兄弟の改革と悲劇

ティベリウスグラックスガイウス・グラックスはそれぞれ約1年・2年と短期ながら護民官の役割を以て多くの政治改革を推進しました。当時、ポエニ戦争での臨時体制の影響・権力をそのまま引き継ぐ形で貴族階級中心に構成される元老院が最高の政治権力として君臨し、事実上の寡頭政治が行われる時代に発展していました。元老院議員の息の根がかかった奴隷を通じて商工業を行い、巨額の富を形成するなどが横行し貧富の差は拡大するばかりの局面でした。

ティベリウスグラックスは腐敗していたローマの経済体制にくさびを打つ為に農地法を制定し、土地保有の限度を設定すること借地権名義の活用などを制限することで奴隷や家族を駆使した一部の階級が経済的な利権を独占することを回避することを目指しました。ティベリウスは農地や土地保有に関する貴族階級集約の状態を打破し、雇用創出や治安維持をする為に国庫をたくさん使い、時に元老院の権限にも抵触するようなことをしてでも強引に改革を推し進めようとしましたが、反対勢力に弾圧・殺害される事態に陥りました。

・兄の遺志を引き継ぎ護民官となったガイウス・グラックスは失業対策として農地法による自作農の保有促進公共事業の徹底による有効需要創出を行いました。経済政策として、騎士階級の優遇元老院議員で占められた司法制度に騎士階級を参画させるなどの既存統治制度にメスをいれる改革を行い、経済・政治の安定・発展を意図する国策を施しました。兄ほど急進的ではなかったガイウスは旧カルタゴの植民都市の開発事業を護民官2年目に行おうとしましたが、アフリカ出張で不在の機に元老院の働きかけにより政治的に不利な立場に追いやられ、最終的には殺害されるに至りました。

 

■マリウスとスッラの時代

グラックス兄弟の改革以後にローマを牽引することになるガイウス・マリウスは軍事組織で名を挙げて政治の世界に参画する遅咲きの人材でした。スペイン・アフリカでの戦場で武功を上げ、平民階級出身ながら50歳の時に執政官就任することで偉業が始まります。

・マリウスは軍事の造詣が深いことを活かし、「ローマ軍の士気・兵力が落ちていること」に課題設定をし、従来の徴兵制から志願制・職業軍人を推し進めました。マリウスは職業軍人階級という特設の組織を作ることで失業問題を解決すると共に、土地などの既得権益の財産に抵触するようなことをしなかったので、広く受け入れられる改革に成功しました。この改革は結果として民衆の支配基盤をマリウスにもたらし、攻略していたヌミディア王国も半分を制圧するにまで進展する偉業に寄与しました。ヌミディア王国を完全に孤立させるためには外交的な問題を解くことが必要であり、それはマリウスの臣下であり会計検査官であるルキウス・コルネリウス・スッラが問題を解決・活躍しました。スッラは後年に激しい独裁政治を繰り広げたことで有名ですが、若手時代は貧しい貴族階級出身であり開放的な態度をとることで有名であったようです。スッラはヌミディア王国との外交を巧みにこなし、ヌミディア王国の主犯であるユグルタを捉え、終戦に導きました。尚、スッラの偉業が見られるのは勝者の混迷(下)※ローマ人の物語7※となります。

・この頃、長らく論点化していた「ローマ連合に加盟する都市のローマ市民権を認めるかどうか」問題は大詰めを迎えていました。ローマ市民権は獲得できないのに、徴税は行われる・奴隷になり、ローマ市民権を獲得する裏口が存在するなどカオスな状態であり、同盟都市のメリットがないと不平不満が募る事態が続いていました。同盟都市の権利を尊重する法案を立案した護民官ドゥルーススが殺害されたことを機に暴動が起きる事態になり、紀元前90年頃に同盟者戦役と呼ばれるローマ同盟の反乱が勃発しました。

・ローマ同盟の反乱はスッラが率いた軍が功を奏し、鎮圧に成功しました。戦後にはユリウス法と呼ばれる同盟都市のローマ市民権を獲得する権利を尊重する法が可決されました。これを機にローマ連合は解体され、ローマ都市の地方自治体のような形で組み込まれていく形となりました。

 

【所感】

ポエニ戦争以後、共和政末期に到達する過程ということで世界史の教科書では端的に記述がなされる時代区分を詳細に記述していくので読み物として純粋に面白いです。グラックスの兄弟の改革は有名ですが、こんなにも短期間に多数の改革をなしていたのかと驚きました。また、元老院の動向など帝政へ移行していくに至る因子が垣間見える内容でした。

・ローマに関する歴史研究は法律・政治・軍事などにフォーカスすることが多いですが、本書では社会動向や経済政策等についても言及がありあまり視点が偏ることなく読み解くことが出来るので読み心地がよく感じました。参考文献に記載しているモンテスキュー「ローマ人盛衰原因論は軍事や政治に関する言及に集中しすぎているとの批判もある内容ですので、違った考察・視点が得られるように読みながら思いました。

 

以上となります!

■要約≪ドキュメント トヨタの製品開発≫

 

今回は安達瑛二氏の「ドキュメント トヨタの製品開発」を要約していきます。トヨタ主査制度の戦略・開発・制覇の記録をまとめたものであり、オイルショック直後に「小型上級者市場シェア50%」という野望を掲げ、その実現に向けた約10年の自動車開発~販売の歴史を追った内容となっています。著者自身がトヨタ自動車で製品企画室主査担当を務め、マークⅡチェイサークレスタの開発を手掛けた知見をベースに研究開発・生産・販売などあらゆる自動車メーカーの機能部門にスポットを当てて記述されています。

 

「ドキュメント トヨタの製品開発」

品質工学計算法入門/矢野宏/著 本・コミック : オンライン書店e-hon

■ジャンル:開発管理・経営

■読破難易度:低~中(車作りに詳しくない自分でも無理なく理解することのできる構成でした。自動車開発職種の簡単な概要やイメージの理解があるとより読みやすくなるかもしれません。)

■対象者:・自動車開発業務に興味関心のある方

     ・主査制度・プロダクトマネジメント・事業開発に関心のある方

     ・ビジョンを掲げ、周囲を巻き込み大きな物事を成し遂げる過程を知りたい方

 

【要約】

トヨタ主査制度とは

トヨタ主査制度は特定のブランドについて企画・生産・販売・開発の全てに責任を持つ制度を指します。技術的な面だけに責任を持つプロダクトマネージャーや販売促進の面だけに責任を持つブランドマネージャーとは似て非なるものとされます。主査は一般企業でいう部長次長クラスの職位であり、スタッフ部門に所属します。主査の多くは「技術のスペシャリストでありながら複数の部門を経験しているもの」であり、製品企画生え抜きみたいなことはないポジションです。メーカーという製品開発プロセスの性質上、主査は社内の開発やスタッフ・マーケティング部門は勿論、部品メーカーや販売店・ボディーメーカーなどとの折衝も担います。

・主査はプロダクトマネージャー同様、人事権を持たずにステークホルダーマネジメントを行う性質があり、それはプロダクトのCore・Why・Whatを研ぎ澄まして納得がいくプランで物事を進めよという役割であることを意味します。

 

オイルショック直後の製品開発

トヨタは戦後物凄い勢いで成長していき、販社の秀逸なマネジメント・トヨタ生産方式によるオペレーショナルエクセレンスの追求・主査制度によるマルチセグメント戦略の合わせ技で国際的に台頭していった会社でした。オイルショックはそうした中で初めて迎えた危機的な局面として記述されています。本書がフォーカスするのは小型上級車市場と呼ばれるセグメントであり、日産がローレル・スカイライン連合で圧倒的な市場シェアを抑えていました。

・そんな中、「小型上級車市場シェア50%」という野心的な目標を掲げ、主査主導の基市場を牽引していく新自動車開発が進むのでした。

 

■マークⅡ・チェイサー・クレスタの開発プロセス

・まずは1970年代にマークⅡ、次いでチェイサー、最後に「トヨタらしくない自動車開発(非トヨタロイヤリティーユーザーセグメント開拓目的)」としてのクレスタの3ブランドの小型上級者市場向けの自動車開発が始まります。

・車という有形のプロダクトであるからこそ、デザインはプロダクトセグメントやビジョンを体現するものとして多くの観点から精査される重要項目です。加えて、エンドユーザーが消費者であるので、「感覚的に馴染むデザイン・使い勝手であること」・「安全性が担保されていること」などはこの時代の自動車開発で留意する絶対的なポイントでした。振動耐熱性安全性等の機能面に関する技術的な問題を乗り越えるための仮説検証と並行して、快適性というユーザビリティの先駆けのような概念に関するデザイン・仮説検証も行うのが具体的にこの時代のトヨタ主査がマネジメントしていたテーマでした。

オイルショック以後、モータリゼーションの波が押し寄せる中で自動車開発には「エンドユーザーのライフスタイルを体現する」というブランドデザインは勿論、軽量化省力化などの技術的な高い要望も突き付けられるといった制約条件が付いて回りました。自動車を買うという行為は自身の消費形式を体現したり、自己実現のような要素を持っていたのです。だからこそ、自動車開発にはデザインに関する知識・スキルに加え、顧客セグメントへの深いインサイトマーケットインではなく、プロダクトアウト気味な○○な世界を実現したいというの強い野心・ビジョンが欠かせないのでした。

・1981年にトヨタ小型上級車市場連合(マークⅡ・チェイサー・クレスタ)は日産のローレル・スカイライン連合を上回り市場シェアトップを獲得するのに成功しました。あれよあれよと進み、1983年についに9年前に掲げた「小型上級車市場シェア50%」というNSMを達成しました。

 

【所感】

・自動車製品開発における主査制度はプロダクトマネージャーの役割に近しく、「有形×消費者向け」という製品セグメントの特質も相まって学べる知見が多いのではないかと思い本書を読みました。ソフトウェアやサービス開発と異なり、技術面の問題やQCDに関する言及が多い点などは自動車産業らしさを感じました。その一方で、顧客セグメントを明確に区切り、ユーザーインサイトからビジョンや解くべき課題を設定するプロセスやユーザビリティを重視したコンセプト設定などは現代のプロダクトマネジメント・事業開発にも通じる考え方で非常に先進的な取り組みであったことも伺えます。

・本書を読みながら、トヨタの主査制度における凄まじい当事者意識とステークホルダーマネジメント、付随する膨大な仮説検証・プロジェクトマネジメント・ドキュメンテーションワークなどを想像しました。そして、改めてプロダクトへの愛強い野心・解きたい課題意識などが大事であり、リーダーシップなどと合わせて精神的な胆力と経験値がモノを言う役割であるように感じました。

 

以上となります!

■要約≪プロダクトマネジメントの教科書 前編≫

 

今回はゲイル・マクダウェルとジャッキー・バヴァロ共著のプロダクトマネジメントの教科書」を要約していきます。「世界で闘うプロダクトマネジャーになるための本」の続編でプロダクトマネジメントのキャリア・スキル・ノウハウなどを体系的にまとめた本です。タイトルの通り教科書のように網羅的に膨大な記述がなされており、本書は2回に分けて要約します。前編の今回はプロダクトマネージャーの役割・プロダクトスキル・実行スキル・戦略的スキルの記述内容にフォーカスします。

 

プロダクトマネジメントの教科書」

Amazon.co.jp: プロダクトマネジメントの教科書 PMの仕事を極める ― スキル、フレームワーク、プラクティス (Compass ...

■ジャンル:開発管理・IT・経営

■読破難易度:中(プロダクトマネジメントに関する全てを取り扱い、非常に緻密な記述がなされているので読むのに時間がかかります。既にPM業務に理解がある人が整理を深める為に読むことを目的とされています。)

■対象者:・プロダクトマネージャー・事業責任者を志す方全般

     ・プロダクトマネジメントの理論の歴史・要点を抑えたい方

     ・プロダクトマネジメントのキャリアやスキルの個別論点に興味がある方

 

≪参考文献≫

■プロダクトマネージャーのしごと

■要約≪プロダクトマネージャーのしごと≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■バリュー・プロポジション・デザイン

■要約≪バリュー・プロポジション・デザイン≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■プロダクトマネージャーの役割

・本書ではプロダクトマネージャーとして必要なスキルをプロダクトスキル実行スキル戦略的スキルリーダーシップスキルピープルマネジメントスキルの5分野に区分しております。プロダクトスキルはユーザーインサイト・データインサイト・分析的問題解決力・技術的なスキル・プロダクトセンスとデザインセンス、実行スキルはプロジェクトマネジメント・MVP・スコープ定義とインクリメンタル開発・プロダクトローンチ・タイムマネジメント・物事を成し遂げる力、戦略的スキルは戦略・ビジョン・ロードマップ・ビジネスモデル・目標設定・OKR、リーダーシップスキルはコミュニケーション・コラボレーション・パーソナルマインドセット・メンタリング、ピープルマネジメントスキルは「本当にマネージャーになりたいですか?」・マネージャーになるには・リクルーティング・コーチング・パフォーマンス評価・プロダクトプロセス・チーム編成の各論となります。

・プロダクトマネージャーは役割が複雑で多面的であり、企業ごとに担う範囲が違うが為に、人により解釈がずれる宿命を持つようです。リサーチャー・データサイエンティスト・UXデザイナーなどプロダクトチームで不在な役割を兼務するということもよくあり、総合格闘技性が強い為に定義はあいまいになりますし、体系だった方法や育成方法も定まらないです。

・プロダクトマネージャーが牽引する一般的なプロダクトライフサイクルのステップはディスカバリー定義デザイン開発デリバリー考察です。プロダクトマネジメントスキルは経験により習熟する側面が強いとされており、それを補う為には世の中に存在するフレームワークやベストプラクティスを使い倒すことがポイントとされます。プロダクトマネジメントは不確実性やトレードオフという特有の感覚になれていくことで習熟していくものとされ、うまく軌道に乗る頃には次のロールを期待されていることが一般的です。

 

■プロダクトスキル

・ユーザーのペインを解き、ゲインをもたらすことがプロダクト開発の役目なので、ユーザーストーリーに対する深い理解と共感を得る為に、プロダクトマネージャーは実顧客にヒアリングし続けることをいつでも徹底しないといけないとされます。これを怠り、「誰も使わない機能開発」や「致命的な機能改悪をする」ということにならないように進めるのがポイントとされます。アンケートやリサーチではなく、実顧客に実際にリアルで会いヒアリングして、「ユーザーストーリー・メンタルモデルの解像度を高めていくということをあらゆるフェーズで徹底し続けること」プロダクトマネジメントスキルを磨き続ける為の不可欠な導線とされます。「片付けようとしているジョブを明かにするという視点で思考を巡らせること」や「既存の解決策の効果がどれほどか」・「なぜ既存の解決策では問題が解決されないのか」ということに問いを巡らせていくことがユーザーストーリーの解像度を高める上で不可欠です。

曖昧な問題を特定し、解くべき問いを明かにする・構造化するというのはプロダクトマネージャーの重要なスキルセットであり、これをうまくやれないとエンジニアやデザイナーシニアステークホルダーとうまく協業していく第一歩をくじくこととなります。「プロダクトの成功・成長を構成する重要なファネルを理解することや歩留まりを上げる為に検討しないといけないテーマや打ち手候補がライトに浮かぶレベルまで問題を構造化することをしているか?」というのはプロダクトマネージャーとしての手腕を問われるよくある問いです。

プロダクトデザインは直感的な理解と導線が接続していることが大切です。UIだけでなくユーザビリティなどもしっかり整合性がないと「使ってもらう」・「使い続けてもらう」というプロダクトの成功可否を左右する歩留まりで大きく打撃を受けるということが発生してしまいます。機能開発や仮説検証を進める際は常に何を明らかにする検証なのか?・この開発により何が得られどのような世界に近づくのか?・具体的にヒットするビジネス指標はどのようなものか?・プロダクトビジョンやロードマップにどのようにヒットするか?という問いに対して解を出せるようにプロダクトマネージャーはプロダクトチームをマネジメントしていきながら進めるバランス感覚が求められます。

・プロダクトマネージャーの技術的なスキルはエンジニアとのコミュニケーションの生産性を構築する上では重要な要素であり、技術の背景にあるテクノロジーへの造詣・簡単なコードの作成ができるようになっておくことは重要なステップとされます。「プロダクト思考過程のシェア」や「ブレインストーミングにエンジニアを巻き込む」などは意外に見えて有効なやり方とされます。技術制約を理解しておくこと・最悪自分で手を動かしてそれらしいアウトプットの方向を示すことができるようになっておくこと工数見積もりやリアリティのあるプロダクトマネジメントの可能性を広げるので、プロダクトマネージャーは自発的に学び経験を作ることで備えておくことが推奨されます。

・プロダクトマネージャーはPRDを筆頭に多数のドキュメンテーションスキルが必要とされます。ドキュメンテーションにおいては「MECEであること」・「要点を簡潔におさえること」・「文書が独り歩きすることを想定して作成すること」など様々な観点を留意しないといけなく、場数がモノを言います。模範的なフレームワーク問題・ゴール・ユースケース・タイムライン・具体案・重要なトレードオフと意思決定といった具合の見出しで構成することです。

 

■実行スキル

プロダクトマネジメントには水面下で多数のプロジェクトマネジメントを行うことやアジェンダを設定するためのスコープ設定・実行支援のデリバリースキルなど複合的な技法が付いて回るものです。プロダクト開発におけるプロジェクトマネジメントでは優先順位付け・チェックポイント・納期・マイルストーン設定という形でプロダクト開発チームをリードする役割がプロダクトマネージャーには求められ、定期的に示唆や進捗・今後の展望についてドキュメンテーションする必要が発生することが一般的です。

・プロダクト開発にはトレードオフになるような意思決定を都度していくことがつきものであり、その為には上位組織や戦略を考慮したスコープ定義・そのロジック設定が欠かせません。これらのグランドルールはプロダクト開発・プロジェクト組成初期にステークホルダーですり合わせておくこと・明文化しておくことがポイントとされます。

・プロダクトローンチ直前はエンジニアやデザイナーだけでなくビジネス部門やシニアステークホルダーとの密接な連携も多くなります。プロダクトが市場にてPMFして収益を生み出しながら持続的に成長していく必要があり、それ故にサービスオンボーディングの為の重要論点の設定GTM(Go To Markrt)の策定などがプロダクトローンチ後の後続テーマとして発生します。この際にプレスリリースを書くかのように「誰のどんな問題を解くか?」・「既存プロダクト・解決策と異なり○○が優れている」・「市場全体では××のポジショニングを取る」などの概念をドキュメンテーション化しておくことが大切とされます。

 

■戦略的スキル

・チームの方向性を決めるビジョンや戦略等はプロダクトマネージャーが担う重要な役割であり、具体的にはロードマップ作成優先順位付けなどの業務にて発揮することとなります。プロダクト戦略にはプロダクトビジョン戦略フレームワークロードマップの3つが重要であるとされ、プロダクトチームが共通の理解をして語れる粒感にそぎ落とされ浸透していかないといけないものです。逆に、常に立ち返る道しるべとして使い倒し続けることをリーダーがしないとそのプロダクト戦略はまともな白物とは言えません。

ゴールやビジョンを示すことと同じくらい大事なのが重要ポイントの把握・実現手段・手順の明示によるプロダクト開発チームのリードです。これを具体的なワークに落とすと、「ロードマップ作成」と「優先順位付け」・「論点だし」になります。資源制約を考慮してより重要な問いを明らかにするための仮説検証プロセスを推し進める・それをステークホルダーと合意形成するなどが具体的なスキルセットとして求められます。まずは作業の優先順位付け・納期・誰が責任をもつかを明らかにすることが第一ステップです。これは信頼残高を起点に、「職位や土地勘を遣わずにコトとして合意形成・推進していく能力」が必要になり、相応のロジカル・クリティカルシンキングと経験値が求められるスキルとなります。

・ロードマップ作成と優先順位付けにおいて考慮する点ユースケースのカバー範囲ビジネスインパク実現可能性ユーザーメリットの大きさなどがあげられ、原案をプロダクトマネージャーが洗い出し、プロダクト開発チームのコアメンバーで精査・合意するというのがよくあるプロジェクト初期の手順です。プロダクトマネージャーは意思決定の連続です。ロードマップや優先順位付けをしながら、シニアステークホルダーから持ち込まれる相談を時にNOをつきつけながら刷新・遂行していく強い精神的なタフさが求められるワークです。

 

【所感】

・本書は約500ページに渡り膨大な記述がなされており、その約200ページ程度を前半ということで取り扱いました。こうして整理するとスキル・スタンス・ノウハウを漏れなく濃密にまとめている本であることがよくわかります。一定数のプロジェクトマネジメントや企画関連業務をこなし、プロダクトマネジメントに関する書籍で理論の輪郭を掴んでいるからこそおさらいという感覚で読み進めることが出来てとても面白かったです。記述のスタイルや抑えている観点は「プロダクトマネージャーのしごと」に近く、生々しい避けられない問題をどのように取り扱い対処していくかなどの膨大なユースケースを抑えている点が流石であると感じました。

プロダクトマネジメント分野においてはベストプラクティスとされる理論・書籍・事例などがある程度パターン化しており、個別事例の掘り下げなどをして理解を深めていくことが今後の成長において必要なのだろうと再認識した次第でした。

 

以上となります!

■要約≪ローマ人の物語5≫

 

今回は塩野七生氏のローマ人の物語を要約していきます。5は「ハンニバル戦記」の上中下巻の下巻であり、紀元前205~紀元前146年の第二次ポエニ戦争終結、事後のマケドニア王国・カルタゴ滅亡までを描いています。4最終盤でローマ軍の救世主として登場したスキピオが引き続き戦いを率いてついにカルタゴの名将ハンニバルと相まみえます。前半は主に第二次ポエニ戦争の個別戦局に関する記述が中心で後半は事後のローマ帝国マネジメント方針や同盟国マケドニアギリシア文明・カルタゴとの折衝の様が描かれます。

 

ローマ人の物語5」

ローマ人の物語 (5) ― ハンニバル戦記(下) (新潮文庫)

■ジャンル:世界史・歴史小説

■読破難易度:低(非常によみやすい文体で書かれており、一部物語調なのでサクサク読めます。世界史の教科書や地図を手元に置いて読むとわかりやすくなります。)

■対象者:・ヨーロッパの歴史について興味関心のある方

       ・ローマの栄枯盛衰の変遷を詳しく理解したい方

 

ローマ人の物語3(ハンニバル戦記(上))は下記≫

■要約≪ローマ人の物語3≫ - 雑感 (hatenablog.com)

ローマ人の物語4(ハンニバル戦記(中))は下記≫

■要約≪ローマ人の物語4≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

≪参考文献≫

■ローマ人盛衰原因論

■要約≪ローマ人盛衰原因論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■第二次ポエニ戦争終期(紀元前205~201年)

・この時代のローマは執政官ファビウスが「ローマ本土防衛構想」を掲げている状態であり、スキピオカルタゴ本国を攻めるという構想を推し進めるのは容易ではありませんでした。マケドニア王国がカルタゴとの同盟を破棄しているチャンスをみて、スキピオは独自にシチリア半島経由でカルタゴ本国を進軍するという動きを見せることとなります。カルタゴ第二の都市ウティカ奇襲に成功したスキピオは有利な条件でカルタゴと講和に持ち込める体制を構築し、その最中でローマVSカルタゴの最終決戦「ザマの戦い」が勃発します。ザマの戦いは事前にカルタゴ軍のハンニバルローマ軍のスキピオで、ポエニ戦争の火種となった「サルデーニャ島・スペインの領有権を巡る主張の違い」を確認した上で始まりました。

カルタゴ軍は得意な「像の突撃・スペイン・アフリカ大陸の傭兵による奇襲戦法」を採用しましたが、ローマ軍のスキピオは読み切り、軽装歩兵と重装歩兵の絶妙な隊列バランスを組み、騎兵を用いた側面攻撃をすることで圧勝します。この敗戦の結果を踏まえ、カルタゴ軍は講和を持ち込み、「カルタゴサルデーニャ島イタリア半島・スペインからの完全撤退」という形で終結しました。

 

■第二次ポエニ戦争事後(紀元前200~183年)

ポエニ戦争以後のローマ元老院スキピオ・アフリカヌスが先導していく形式をとり、ギリシア人の依頼を受けてまずはマケドニア王国の侵略を推し進めていくことになります。ローマはプトレマイオス朝エジプト・セレウコス朝シリアなどとの絶妙な関係を意識しながらアテネに対して侵攻を深めるマケドニア王国とどう対峙するかを判断する展開になりました。マケドニア国王フィリップスポエニ戦争においてハンニバルと結託してローマを攻めようとした前科持ちということで介入体制を持たざるを得ないとされました。

・この時代のヘレニズム諸王国はアレクサンドロス大王の以後分割統治されて、アンティゴノス朝マケドニアセレウコス朝シリア・プトレマイオス朝エジプトの3国が政治的な覇権争いを百年程度緩やかに続けていた状態でした。エジプトやシリアは素直にギリシア人に現地文明が服従するという形式を採用しましたが、アテネやスパルタなど優れた文明をもつマケドニア地域はそうはいかず、ギリシア現地がアカイア同盟・アエトリア同盟を結託するなどの抵抗を見せていました。当時のローマはギリシア文化に傾倒していたこともあり、ギリシア現地勢力の抵抗に力は課すもののマケドニアを滅亡させるまでには至らない、至れないという複雑なバランスでした。結果的にローマはマケドニア王国と戦い圧勝を収めることでギリシア都市の自治は保たれ、緩やかな同盟関係に進展していくのでした。マケドニア王国・ギリシア諸勢力の懐柔に成功したローマ軍は旧カルタゴ軍のハンニバルをかくまうセレウコス朝シリアと小アジアで戦争をすることとなり、ポエニ戦争で鍛え上げられたスキピオ式の兵法をもってこの戦いも圧倒していくこととなります。

 

マケドニア滅亡(紀元前179~167年)

マケドニア王国は統治する国王の思想により、ローマとの距離感は変容し続けるものであり聡明なフィリップス5世はローマと友好関係を構築しましたがフィリップス5世の後に即位した王ペルセウスは反ローマ的な思想の持主でした。ギリシア文明というのは誇り高く、自分達が特異であることや優れた文化文明を構築し、ヨーロッパ世界の起源を形成したという自負をお持ちであり、ローマに対しての現状を憂いての抵抗でした。

・ローマはスキピオ系列であるエミリウスという執政官がハンニバルに鍛えられたスキピオ式兵法を用いて巧みな戦いを展開し、マケドニア王国を圧倒します。結果的にマケドニア王国自体は滅亡の道を歩み、ギリシア都市は自由自治を尊重するスタイルでローマはマネジメントし、公道を作る・強い租税を強いるなどの方式は採用せず絶妙な距離感で対峙することをローマは意思決定しました。

 

カルタゴ滅亡(紀元前149~146年)

ポエニ戦争以後のカルタゴは独立国家として存続していましたが、武装は抑えられ戦いは常にローマの許諾をとるという形であったのでじり貧な状態にありました。カルタゴはかつての通商国家としての国際的な競争優位がなく、ただの農園経営に従事する弱小国といった具合でした。カルタゴは同じ同盟関係にあり、カルタゴの隣国にあたるヌミディア王国の台頭・脅威に悩まされていました。カルタゴヌミディア王国の脅威から約6万の傭兵を調達し、ヌミディア王国に対して専守防衛の観点から攻撃を仕掛けました。これが災いとなり、カルタゴは滅亡の道を進むこととなります。カルタゴヌミディア王国との戦いで敗戦すると共に、ローマに対して反省の色を徹底しなかったことで「ローマ同盟を反故にした国」という認識を元老院が強めるに至ってしまいました。この時代のローマはギリシア都市がマケドニア王国崩壊以後、体たらくであり反ローマ的な動きをみせることもあり、「寛容路線の帝国主義」から「強硬派帝国主義」へ思想を変容させるフェーズでもありました。こうしたこともあり、カルタゴは滅亡・ローマ属領化の道を進むことになってしまいました。

・この時代にスペインカルタゴはローマの属州になり、ローマ直轄統治をするに至りました。加えて、おこぼれのような形で後継者不足に困った小アジアの一帯がローマ直轄領に組み込まれることとなり、ローマは一気に地中海世界をも治めるに至りました。ギリシアと合わせてこれが東ローマ帝国の基礎を構築します。

 

【所感】

・4の華々しい戦争を取り扱うのに比べて戦争前後の各国・関係者の駆け引きにフォーカスした展開となっており、世界地図を見返しながら読み進めることで非常に面白く読むことができました。わずか60年の間に一気にローマ帝国が広大になった様は圧巻であり、ヨーロッパ世界においてローマとギリシアが誇り高き文明として評価される理由を再確認できたように思えました。

・現代とは全く異なる各国の力関係・発展度合いを鑑みると、国の発展を後世する変数が時代と共に変容し都度そのシステムに最適化している国が一時的な覇権を占めるということを繰り返してきているのが歴史であるということを再認識させられます。近代世界システムシリーズ(資本主義に立脚した国際分業体制のからくり)にも似たような記述がありましたが、それを改めて理解した次第でした。

 

以上となります!

■要約≪「ついやってしまう」体験のつくりかた≫

 

今回は元任天堂企画開発者の玉樹真一郎氏著の「「ついやってしまう」体験のつくりかた」を要約していきます。スーパーマリオゼルダの伝説ドラゴンクエストなどを題材に、優れたゲームデザインに用いられている法則を解説していく内容です。ゲームはUI/UXデザインの究極系と呼べるジャンルであり、エッセンスは事業・プロダクト開発に大きな示唆をもたらすと考えチョイスしました。

 

「「ついやってしまう」体験のつくりかた」

元任天堂プランナー著「ついやってしまう体験」のつくりかたを読む - ファミコンのネタ!!

■ジャンル:商品企画・UXデザイン

■読破難易度:低(必要となる前知識はなく、ビジュアル・直感的にとても読みやすい本です。)

■対象者:・優れたゲームデザインに用いられる法則に興味関心のある方

     ・体験価値に興味関心のある方

     ・直感・驚き・物語の仕組みに興味関心のある方

≪参考文献≫

ユーザビリティエンジニアリング

■要約≪ユーザビリティエンジニアリング≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■UXデザインの法則

■要約≪UXデザインの法則≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■岩田さん 岩田聡はこんなことを話していた。

※要約ブログ無※

 

【要約】

・ゲームには人を動かし、没頭体験を積んでもらうために3つのデザイン法則が採用されているとして、そのデザインの仕組・相互作用を解説していく本です。

 

■直感のデザイン

「仮説→試行→歓喜というステップを経てシンプルで簡単な体験で「直感」させることを通じゲームに没頭する体験を生み出すデザインです。脳と心の性質共通の記憶といった人間誰しもが持つ共通の性質を用いて、狙って動かす作用です。スーパーマリオのステージ1-1の画面デザインを題材に詳しく本書内で解説されています。良く用いられる体験設計の手法ですが、簡単に飽きや疲れが来るというデメリットを持つので、後続の驚きのデザイン・物語のデザインとの掛け合わせで用いられることが一般的のようです。

 

■驚きのデザイン

「誤解→試行→驚愕」というステップを経て、つい夢中になる体験をデザインするのが驚きのデザインです。予想が外れる驚きで疲れや飽きを払しょくするのが狙いで、前提・日常といった人々の思い込みを活用してデザインするのが基本原理とされます。ドラクエシリーズの「ぱふぱふ」などを題材に詳しく本書内で解説されます。

 

■物語のデザイン

「翻弄→成長→意志」というステップを経てユーザー自身の物語を生み出す・成長体験を積むというのが物語のデザインです。ゲームそのものの骨格を作る原理原則として採用され、感情を突き動かし人間的な成長・非現実に没頭する展開などで引き込む狙いがあります。随所に直感のデザイン・驚きのデザインを散りばめて、ユーザー体験を刺激し遷移していくのが具体的なデザイン3つの相互関係となります。

「命のやりとり」「未知の体験」をモチーフに組み込むことで憑依率はより高まっていくと推奨されます。「自己裁量で物語を想像する」・「デザインする」ということこそが没入体験を促進し、だからこそ結末や解釈が明確に描かれない方法を採用するというのがよくあるゲームの作り方のようです。これは映画や小説のストーリーメイキングと同じで、非日常に没頭するということが如何に価値として高く置かれているかを明らかにするものです。そして、「物語の最後はスタート地点に戻る」という神話の法則と同じような仕掛けを施すのが良い体験設計のコツとされています。これは「ユーザーがゲームへの没頭体験を通じて非現実の体験をした後に、改めて現実に戻っていく疑似的な導線を作る」という意味を持ちます。

 

【所感】

・ゲームはUI/UXデザインの究極系と呼べるジャンルであり、購買以後は極力人手のサービスを介さずプロダクト体験を享受することが出来るという凄みに満ちています。ゲーム分野で採用・設計されている法則(思考プロセスや抑える要所)はプロダクト・事業開発においても大きく通じる内容があると再認識した次第です。

・ユーザーと体験ストーリーを深く想像・共感しステークホルダーで同じ青写真を描き、理解し続けながらこうした開発・設計をしていくことが大切であると思い、そのプロセスは日々の自分自身が対峙している業務にも応用できる要素が多いなと感じました。本書はライトに読めながら非常に奥深い技法が散りばめられており、没頭する読書体験を得られました。これも本書の法則が活用されているのかと「直感のデザイン」を感じて読み終えた次第ですw

 

以上となります!

 

 

 

■要約≪バリュー・プロポジション・デザイン≫

 

今回はAlex Osterwalaer・Yves Pigneur著の「バリュー・プロポジション・デザイン」を要約していきます。リーンキャンバスを構成する「バリュー・プロポジション」にフォーカスしてプロダクト・事業開発をしていく為に抑えるべきポイントや望ましい手順を体系的に記述した本です。本書はビジネスモデルについて言及した「ビジネスモデル・ジェネレーション」の続編として有名です。

 

「バリュー・プロポジション・デザイン」

バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る | アレックス・オスターワルダー, イヴ・ピニュール, グレッグ ...

■ジャンル:開発管理・IT・経営

■読破難易度:低~中(用語や思考法になれないと読みづらさを感じるかもしれません。豊富な図解とデータを基に記述されているので、慣れていればサクサク読むことが出来ます。)

■対象者:・プロダクト開発に従事する方全般

     ・仮説検証を伴う業務に従事する方全般

     ・イノベーションの原理原則に興味関心のある方

 

≪参考文献≫

■ジョブ理論

■要約≪ジョブ理論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪INSPIRED 熱狂させる製品を生み出すプロダクトマネジメント 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■UXデザインの教科書

■要約≪UXデザインの教科書 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪UXデザインの教科書 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■キャンバス

価値創造キャンバスには顧客プロフィール(お客様をよりはっきりと理解するためのもの)とバリューマップ(顧客のためにどう価値を創造するかを描くもの)の2種類があり、その2つが重なりあう所にフォーカスするべきなのだとされます。「顧客が求めていて、自社がうまく価値提供出来る所」ということです。バリューマップは製品/サービスペインリリーバー(悩みを取り除くもの)ゲインクリエーター(恩恵をもたらすもの)で分解されます。つまり、「何を課題解決し、どんなアウトカムを顧客へもたらすのか?」ということを整理したものです。顧客プロフィールは顧客の仕事(顧客が成し遂げたいことを顧客の視点で記述)・ペイン(顧客の仕事に関係する悪い結果、リスク、障害)・ゲイン(顧客が達成したいこと・顧客が求める具体的な恩恵)の3つに分解されます。

 

■デザイン

・顧客プロフィールとバリューマップを照合してプロダクトの骨格を明らかにした後は簡単なプロトタイプを作ります。顧客を理解してバリュー・プロポジション・デザインを形作り、その中から更に開発を続けるものを選び(マーケットポテンシャル・競合優位性・実現難易度・収支などを総合的に加味して取捨選択していく、その意思決定プロセスも大事)、適切なビジネスモデルを選定するのが次の段階でやることです。

・事業のコアとなる概念が定まってきたら、そのタイミングでリーンキャンバスの各項目(主なパートナー・主な活動・リソース・バリュー・プロポジション・顧客との関係・チャネル・顧客セグメント・コスト構造・収入の流れ)を埋めることをするのが良いとされます。あくまで「顧客が誰で、どんな資源を活用して価値を提供するか?」を明らかにするのが先決です。そうすればパートナーやビジネスモデル・コスト構造などは自然と規定されるものだからです。技術上の制約条件・顧客のペインについて深い洞察を得ることが重要であり、そこにこそイノベーションの種や「お金を払ってでも解決したいビジネス問題」が潜んでいます。

・プロダクトは顧客のある文脈におけるペインやゲインを支援するものであり、その前後に潜む制約条件や行動の変遷・顧客の価値基準における優先順位付けを把握して急所になる所に閉じて尖ったプロダクトにするのが基本となります。

 

■テスト

・大事な原則として下記10個が存在します。

エビデンスは意見に勝る」

「失敗を受け入れることで素早く学びリスクを減らす」

「早期にテストし後で改良する」

「実験と現実が食い違うこともある」

「学習とビジョンのバランスを取る」

「アイデアの決定的な欠陥を見つける」

「顧客を理解する」

「計測できる形で検証する」

「すべての証拠が信頼できるとは限らない」

「取り返しのつかない決定については特に念入りに検証する」

・顧客開発のコアとなる4プロセスは顧客の発見顧客への実証顧客の創造企業の構築です。顧客を定義し、効果的な価値機能の優先順位付け・販売チャネル・マーケティング手法の特定とKSFの特定をすることで事業として成立します。

 

【所感】

・プロダクト開発・事業開発はいわゆるジョブ理論・デザイン思考・3Cなどのフレームワークを総動員して、水面下で無数のプロジェクトマネジメントを行いながら遂行していくある程度定型化された手法であることが本書の内容から伺えます。モノで溢れた時代において、製品単独で優れた価値(主に機能面)を実現することは不可能であり、文脈(体験価値)に基づいた緻密なUXデザイン・ビジネスモデル・チャネル設計・選定をしていくことで総合的に価値が形成されるものであるということがよく理解できます。

・本書単独で大きな示唆を得たというよりも、これまで読んできたITプロダクト関連の本や自分自身で思考・検証してきたテーマが一本の線に繋がったような体験を得る内容の本でした。確立された手法・お作法があるのであれば遵守して自分で実践することで要諦を掴みながら自分の色を出していくのが大切と再認識した次第です。(認知コストを下げ、後のステークホルダーとの合意形成プロセス迄考慮するとMECEが担保されるフレームワークを使い倒すというのはシンプルながら芯を食っていると感じました。)

 

以上となります!

■要約≪ローマ人の物語4≫

 

今回は塩野七生氏のローマ人の物語を要約していきます。4は「ハンニバル戦記」の上中巻の中巻であり、紀元前219年~206年の第二次ポエニ戦争を取り扱います。カルタゴ軍の英雄ハンニバルが登場し、連戦連勝を繰り返しローマの大半を制圧するにまで勢いづいた後にローマ軍の救世主としてスキピオが台頭していき、戦況を押し返していく様を記述しています。

 

ローマ人の物語4」

ローマ人の物語 4/塩野七生 :BK-4101181543:bookfanプレミアム - 通販 - Yahoo!ショッピング

■ジャンル:世界史・歴史小説

■読破難易度:低(非常に読みやすい文体で書かれており、一部物語調なのでサクサク読めます。世界史の教科書や地図を手元に置いて読むとよりわかりやすくなります。)

■対象者:・ヨーロッパの歴史について興味関心のある方全般

    ・ローマの栄枯盛衰の変遷を詳しく理解したい方

ローマ人の物語3は下記※

■要約≪ローマ人の物語3≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

≪参考文献≫

■ローマ人盛衰原因論

■要約≪ローマ人盛衰原因論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■第二次ポエニ戦争前期(紀元前219~216年)

・第一次ポエニ戦争を経て、ローマはイタリア半島北部~南部・シチリア半島を手中に収めカルタゴに対して完全優位な状態となっていました。カルタゴの将軍ハンニバルは事を荒立てて局面を打開すべくローマと直接全面対決するのではなく、「ガリア山地を通りアルプス山脈を越えてイタリア半島で直接ローマへ戦いを起こす」というやり方を狙いました。当時のカルタゴはスペインに広大な植民市を形成していた為、当初ローマ元老院シチリア半島スペインが主な戦場になると見立て防衛拠点を整備していました。まさかアルプス山脈を越えて、カルタゴ軍が直接攻めてくるなどは想像もしていませんでした。

ハンニバルガリア人を懐柔しながらイタリア半島北部からローマに侵略することに成功し、スペイン・ガリア・リビアの傭兵連合軍を巧みに駆使しながら直轄軍の被害を最小限に繰り広げながらローマ軍相手に連戦連勝で進軍していくこととなります。

※尚、ハンニバルが採用した進軍ルートや戦略・戦術はいずれも後世でナポレオンが採用・参照しているものです。

トレッビアトラジメーノカンネイタリア半島の要所でローマとカルタゴは衝突しいずれもハンニバル率いるカルタゴ軍が勝利し、イタリア半島の大半を占拠するにまで進軍しました。ハンニバルは直接ローマを叩いても効率が悪いと考え、ローマ同盟の崩壊を狙って植民市を懐柔しようという秀逸な展開していきます。

 

■第二次ポエニ戦争中期(紀元前215~211年)

カルタゴ軍はカンネの戦いで得たローマ軍の捕虜で身代金確保や講和持ちかけを狙い、その過程でシチリア半島のシラクサをローマ同盟からの脱却させることに成功します。加えて、カルタゴマケドニア王フィリップスと同盟を結びローマを間接的に抑制することでじわじわと力を削いでいきます。そんな中、ローマ優勢で均衡が保たれていたスペインの戦場では執政官コルネリウス兄弟が敗れたことで均衡が崩壊します。いよいよピンチに立たされた中でローマ軍のカリスマ的存在のスキピオが台頭していきます。

 

■第二次ポエニ戦争後期(紀元前210~206年)

ハンニバルは引き続きイタリア半島に留まり、ターラントと呼ばれる貿易と国防の要である植民市を巡りローマ軍と対決していました。一方のスペインではカルタゴ軍はハンニバルの子孫を中心とした3将軍が分散して防衛する陣形を取っておりました。スキピオは急戦を仕掛けカルタヘーナと呼ばれるハンニバル家ゆかりのスペインの土地を攻めて落とし、優位を拡大するとベクラの会戦でも勝利を重ねます。この事態を見て不味いと判断したカルタゴ陣営はスペインにいた3つの軍隊を分割して、ハシュドゥルバル率いる軍はイタリア方面へ進み、ハンニバルを支援することを目的とし、マゴーネとジスコーネ率いる軍は統合し、スペイン領土のスキピオ率いるローマ軍を攻めることに意思決定しました。

・ハシュドゥルバルとハンニバルの合流を止めようとローマ軍がカルタゴ軍へ仕掛ける戦いメタウロの会戦はローマ軍指揮官ネロが機敏な側面攻撃をしたことが幸いし、あっさりカルタゴ軍は敗北しハシュドゥルバルは戦死します。一方のスキピオ率いるスペイン領土のローマ軍はカルタゴ軍(マゴーネ+ジスコーネ連合軍)に対してイリパという地で戦いを繰り広げました。スキピオは駆け引きの後に奇襲を仕掛け、スペインの兵士を駆使して突撃するというハンニバルのような傭兵使いのような戦術を展開しました。結果的に将軍を打ち取るなどはなかったものの、ローマ軍が勝利し大量の騎兵傭兵を獲得しローマ軍は更なる盤石の基盤を形成し勢力を盛り返すに至り第二次ポエニ戦争終結へ向かいます。

 

【所感】

・本巻は戦争に関する記述が非常に多く、ハンニバルスキピオのカリスマ性が際立つ構成となっています。個別の戦略・戦術の組み立て方はクラウゼヴィッツ戦争論でも展開された考え方が盛り込まれており、当時読んでよく理解できなかった部分の理解が進むという具合でした。側面攻撃の優秀性や地形・情報の非対称性を駆使した展開などはこの時代特有の兵法であるように感じました。

イタリア半島とスペインについてこれだけ豊富に記述された史実を読み解き考えを巡らすことはあまりなかったので、ポエニ戦争という世界史の教科書ではたった数行で記述される出来事も掘り下げると面白いものだなと感じた次第です。

 

以上となります!

■要約≪スターバックス再生物語≫

 

今回はハワード・シュルツ氏のスターバックス再生物語」を要約していきます。ハワード・シュルツ氏はスターバックス社の成長を牽引した偉大なCEOです。CEO退任後、スターバックス社の成長に陰りが見える中で、2008年頃にCEOに復帰しリーマンショックという大波乱の中で約2年掛りで会社の変革を次々に行い、成長曲線へ再興させていく過程を記述したのが本書です。尚、ちっぽけなコーヒーショップに過ぎなかったスターバックスを大規模企業にまで押し上げたCEO1回目の過程を記述した本にスターバックス成功物語」があります。

 

スターバックス再生物語」

【南場智子・藤田普・村上太一】失敗が学べる経営者の告白本50選

■ジャンル:経営

■読破難易度:低

■対象者:・偉大な会社・事業の変革プロセスを詳しく知りたい方

     ・体験価値に関して興味関心のある方

     ・熱狂的なビジョンを持つ組織作りに興味関心のある方

 

【要約】

■概要

スターバックスは1980年代に一気に拡大したコーヒーストアです。ハワード・シュルツ氏がイタリア半島で体験した「コーヒーを通じた体験価値」をコンセプトにしたブランドマネジメント重視の事業運営方針が特徴です。アルバイト社員にも健康保険とストックオプションを付与し、海外戦略により一気に拡大路線を牽引したのが全盛期の1990~2000年のスターバックスです。2000~2007年は外部環境が変化する中でコアを見失い、顧客価値の探究などもしない中で縮小均衡の危機に見舞われ、2008年に会長であったハワード・シュルツ氏が経営に復帰することで立て直しを図ることになります。

スターバックス社は創業当初から「利益を出しながら社会に支持される持続性を持った会社であること」、「コーヒーではなくそこに付随する購買体験を提供する究極のサービスカンパニーたる」といった方針が明確に定まっていました。ハワード・シュルツ氏には「自宅・職場の次に値するサードプレイスとしてコーヒーストアのポジションを確立する」という大義名分が存在しており、その原点に立ち返る所から変革は始まります。

・本書は5部構成になっており、1部は創業以来一貫してきたサービスポリシー(「モノではなく、体験を売る」・「我々は究極のサービスカンパニーである」etc)に関して、2部は再建をするにあたり「何を続けて(残して)、何を変えるのか?」という問いに対して向き合い葛藤するプロセスに関して、3部は店舗閉鎖・フード販売縮小など痛みを伴う経営意思決定をしながらデジタル戦略・リワードプログラムの構築など変革の先駆けとなる方針を打ち出す過程、4部はリーマンショックの動乱期の中にコミュニティマネジメント・ブランドマネジメントなどの方針を貫いてきたことが芽を咲かせ、リーン制度など次の変革の種になるような変革が生まれるまでの過程、5部はヴィアというブランド名でインスタントコーヒー市場を開拓する様、コーヒー農家とのパートナーシップ、変革成功までの過程をまとめています。

※詳しい内容は本書のダイナミックな記述ぶりを直接読んでいただくほうが面白いと思うので割愛します。プロセスと結論のサマリーが知りたい場合はWikiなどをチェック頂ければわかるので。

 

【所感】

「モノではなく体験を売るのである」・「サードプレイスの重要性が叫ばれる時代が来る」など創業時から先見性があり、変革をする中でも創業から一貫した考え方・方針を一部残しながらデジタル戦略や設備投資を徹底するなどの研ぎ澄まされた意思決定の連続は読んでいて圧巻です。CEOを長らくやってきたからこそのプロダクト(事業)愛強烈なリーダーシップも感じられますが、それでもプロダクト(事業)責任者にも求められるようなビジョンメイキング・コミットメントなのだろうと考えさせられました。

ハワード・シュルツ氏自身がコーヒーをこよなく愛しており、生い立ち故の従業員やコーヒー農家などのステークホルダーを最大限尊重する経営方針の迫力が感じられました。当たり前ですが、「事業は顧客を創造し、雇用を生み出し世の中に影響を与え続けるものである・その影響度の大きさと意味を肝に銘じて日々意思決定せよ」ということのように感じました。

 

以上となります!

■要約≪ユーザビリティエンジニアリング≫

 

今回は「ユーザビリティエンジニアリング」を要約していきます。UXを構成するユーザビリティ(使い勝手)の設計・調査・評価を通じてUXデザインの実務を行う為の手法や具体的な手順を体系的にまとめた本です。モノで溢れる時代において、UXデザインはプロダクト開発における根幹をなす概念です。そのUXデザインの構成要素の大半はUIデザインユーザビリティで構成されるのですが、その後者に特化した内容です。

 

ユーザビリティエンジニアリング」

ユ-ザビリティエンジニアリング / 樽本 徹也【著】 - 紀伊國屋書店ウェブストア

■ジャンル:IT・UXデザイン・マーケティング

■読破難易度:低~中(前知識不要で読むことが出来、非常に具体的な業務手順や心構えに関する記述が多いので読みやすいです。)

■対象者:・プロダクト開発・UXデザインに関わる方全般

     ・マーケティング・企画業務に隣接する知見を得たい方

     ・仮説検証・調査・分析などの一連の業務手順を心得たい方

 

≪参考文献≫

■リーン顧客開発(見込顧客選定~インタビュー実施を通じた仮説検証サイクル)

■要約≪リーン顧客開発≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■UXデザインの教科書

■要約≪UXデザインの教科書 前編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪UXデザインの教科書 後編≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■UXデザインの法則

■要約≪UXデザインの法則≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

ユーザビリティについて

・ISOによると、ユーザビリティとは製品が特定の目標を達成する際に用いられる際の効果・効率・ユーザーの満足度合いを指すとされます。「ユーザーが使う文脈に即しているか」・「最短ルートで快適・効率的に目的を果たす導線になっているかどうか」がユーザビリティエンジニアリングにおいて作りこむべきポイントとされます。

・全てのユーザーを満たすような製品設計は不可能で、必ず特定の属性のユーザーの行動や心理の傾向・価値観に即した、ユーザーに刺さるような細部の作りこみが欠かせなません。だからこそ、ユーザーインタビューやアンケート・ジャーニーマップを用いたプロダクト開発チームでの特定セグメントに関する情報・仮説の可視化を通じた共通認識形成をすることが求められます。ユーザーが接点を持つ分脈(タッチポイント)というものを事実からしっかり見立てて、プロダクト開発チームでコンセンサスをとるというステップを経ないと、立場の強いプロダクト開発メンバーの意向に機能開発が集約するという悲劇が起きてしまいます。それでは効果検証は適切にできないですし、プロダクトがマーケットに効果的に浸透して役割を果たしているのかもわかりません。UXデザインを検討する上においてはプロダクトを雇用するユーザー属性や場面、その背景に潜むペインや制約条件をしっかり理解し、ストーリーとして変遷を理解することが大事です。

 

■UXデザインと人間中心設計について

スターバックス・ディズニーランド・iPhoneなどは圧倒的な体験を生み出すUXデザインを事業の根幹に据えているプロダクトの典型例です。エクスペリエンスは競合優位を圧倒的につけてかつユーザーを継続利用させる一種の宗教のようなものであり、一貫したストーリーや細部の作りこみを丁寧に行って初めて実現できる世界です。製品やサービスなどの機能的な要素だけでは差別化が出来ずレッドオーシャンに陥ります。ブランドや体験により競合優位を形成することこそがプロダクトライフサイクルやLTVを拡大させるポイントであり、これを狙って行うことがUXデザインやプロダクトマネジメントのスコープです。UXは表層-骨格-構造-要件-戦略の5階層で構成されます。

・UXデザインを実現していく上では人間中心設計を遵守することが欠かせません。人間中心設計は調査-分析-設計-評価-改善-反復の6プロセスを経て行われます。この仮説検証・反復プロセスを遂行していく為にはITプロダクトの場合、必然的にアジャイル開発の形式で遂行する必要があり、プロダクトマネジメントの開発手法は必然的にUXデザインおよびアジャイル開発と共同関係にあるのです。UXデザインのスコープには利用前・利用中・利用後の3つ存在しており、「そこに付随する行動や心理の変遷を狙って設計すること」が具体的な狙いとなります。具体的には「利用状況の理解」・「ユーザー要求の明示」・「解決策の作成」・「設計の評価」という4つの行動を反復的に行うことになります。

 

ユーザビリティエンジニアリングを行う為の調査・分析・設計手法

・想定顧客に該当するユーザーへのインタビュー(フォーカスインタビュー・グループインタビュー)行動観察(コンテクスチュアㇽ・インクワイアリー)は代表的なユーザビリティエンジニアリングを行う為に活用する手法です。ポイントはユーザーの声をそのまま受け入れるのではなく、その背景にある心理や行動・制約条件を紐解くことが重要な点です。なぜならユーザーの声とは自分自身の体験を自分で分析したに過ぎないからです。ユーザー対峙する上での基本スタンスはユーザーは教えるのが下手であり、「要約して話をする」・「話が不完全」・「例外を除外する」などまるで気難しい師匠のような形式をとるのが一般的ということを心得ておくことです。

・仮説検証にふさわしいユーザーを抽出してインタビューした後は適切な考察・分析をする為に、「バックログから要点を抽出し時系列や業務フローの塊毎に再整理すること」が必要になります。その際には文化人類学のフィールドワーク手法として発達したKJ法が有効とされており、KJ法のミソは「図示化・可視化してグルーピングするステップそのものにある」と著者は断定します。文章の塊を何度も読み、「重要な個所を短い文書に抽出してカード化していく」のが第一ステップです。第二ステップは「似たようなカードをまとめて見出しをつけてグルーピングする」というもので、第三ステップは「グループ間の因果関係や前後関係などを図示化して構造を整理する」というものです。こうしてストーリーを編み直していく中で検証しないといけない問いや論点を炙り出していくことKJ法を行う妙とされており、UXデザインに大きな示唆を与えるプロセスです。

・大前提として、プロダクトは顧客の問題を解決して収支に合うような形で運営していくことが必須条件です。その為、想定ソリューションや機能開発は「ビジネスとして成立するか?(収支に合うか・マーケットポテンシャルが一定あるか・お金を払ってでも解決したいペインか・魅力的なゲインか)」という観点の問いを立てて検証することは怠ってはいけません。なので、ビジネスモデルキャンパスリーンキャンバスなどの事業開発分野のフレームやペルソナジャーニーマップなどのマーケティング分野のフレームを駆使して情報を整理しプロダクト開発チームで共通認識を整理し続けることが大切とされます。

 

【所感】

・要約記載箇所以外にプロトタイプ作成・ヒューリスティック評価・ユーザーテストの設計~実施~分析なども本書には記載がなされていますが、膨大になるので割愛しました。興味を持たれた方はぜひ直接手に取り読んでいただけると良いかと。

・本書内容はUXデザインやプロダクトマネジメントの書籍にて言及されてきた概念のおさらいであると共に、具体的な実務に落とし込むと何をするのか・何を気をつけないといけないのかが大変わかりやすく記述してあり当該分野の定番書と名高いだけあるなと感じました。マーケティングイノベーションを狙って行う為に、出来るだけ確率を高める手法としてUXデザインやプロダクトマネジメント分野の理論やフレームがあるのだなと再認識した次第です。「守・破・離」の概念のようにまずは理論に忠実に思考し、活用して経験や知見を得ながら場面や文脈に応じて自分なりのアレンジを加えていきながらスキルセットしていくのが望ましい分野なのだろうと納得しました。ビジネスモデルキャンバス・リーンキャンバスに関してはまとまって勉強したり、実際に手を動かして記述したことがあまりなかったのでこの際取り組んでみようと思った次第です。

・意外だったのはユーザーインタビュー・行動観察・調査分析などのステップにおける要点は自分自身が長年やってきた営業職や組織マネジメントにおける知見と通じる所があり、意外な応用分野があるものだと感じました。それだけ顧客接点をとり、顧客起点で物を考えたり情報編集をする営業職が基本でありながらポータブルなスキルなのだということもわかりました。

 

以上となります!

■要約≪ローマ人の物語3≫

 

今回は塩野七生氏のローマ人の物語を要約していきます。3は「ハンニバル戦記」の上中巻の上巻であり、上巻はローマがイタリア半島を統一してからシチリア半島の領有権を巡り、北アフリカカルタゴポエニ戦争を繰り広げる様を記述しています。主に紀元前264年~219年のローマの動向を描いており、第一次ポエニ戦争に勝利し事後のローマ周辺地域の統治体制の構築までを描きます。

 

ローマ人の物語3」

ローマ人の物語3 に対する画像結果

■ジャンル:世界史・歴史小説

■読破難易度:低(非常に読みやすい文体で書かれており、一部物語調なのでサクサク読めます。世界史の教科書や地図を手元に置いて読むとよりわかりやすくなります。)

■対象者:・ヨーロッパの歴史について興味関心のある方全般

      ・ローマの栄枯盛衰の変遷を詳しく理解したい方

ローマ人の物語1・2は下記※

■要約≪ローマ人の物語1≫ - 雑感 (hatenablog.com)

■要約≪ローマ人の物語2≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

≪参考文献≫

■ローマ人盛衰原因論

■要約≪ローマ人盛衰原因論≫ - 雑感 (hatenablog.com)

 

【要約】

■第一次ポエニ戦役(紀元前264~241年)

ポエニ戦争以前のシチリア半島はローマの息がかかったギリシア系都市とカルタゴ直轄領が相まみえる構図にありました。カルタゴアテネ衰退以後、海運と海軍をもって地中海世界を制圧するほどの権力を有しており、ローマ同盟は対決を余儀なくされていました。シラクサメッシーナを巡る支配権で対立し、ローマとカルタゴは代理戦争のような形で衝突をします。ローマは元々内陸の戦いで功績を挙げて拡大した陸軍中心の文明でしたが、カルタゴとの戦いの中で海軍を拡大させる必要に迫られました。五段層軍船と呼ばれる大規模な船を使いこなしたカルタゴに対して、戦争勃発当初のローマは三段層軍船を小規模に持ち合わせる程度の軍備でした。ローマはカルタゴとの戦争の中で敵の技術を盗み、ボート訓練のようなことを市民に課して無理やり兵力増強をしていくことになりました。「細部に執着せず、優れたものを取り入れる」を徹底する様がローマの競争優位の源泉とされており、後にギリシア語やギリシア哲学を取り入れて文化基盤を整備するのも同様の流れを取りました。

・ローマと対決するカルタゴは通商(海運)・海軍・農園経営に優れた北アフリカの文明であり、傭兵を柔軟に活用しながら戦いを繰り広げる性質がありました。ポエニ戦争初期はスパルタ人の傭兵隊長クサンティッポが指揮をとり、スパルタ式の軍隊組織にカルタゴを仕上げて備え、その後はハンニバルの父親にあたるフェニキア人のハミルカルが台頭し指揮をとる流れを取りました。カルタゴ国内はイタリア半島進出派アフリカ大陸支配強化派に二分しており、うまく政治統率がなされていませんでした。マルサラ、トラパニといったシチリア半島の要所をローマに落とされたことを踏まえ、ローマ執政官カトゥルスとハミルカル講和条約が結ばれました。そうした流れで紀元前241年に第一次ポエニ戦役は終結を迎えることになります。カルタゴは約400年統治してきたシチリア半島から完全撤退をして、地中海の覇権はエジプト・シリア・マケドニア・ローマ・カルタゴが群雄割拠する構図になりました。

 

■第一次ポエニ戦役後(紀元前241年~219年)

カルタゴは傭兵に兵力調達を頼っていたので、敗戦を受けた傭兵の報酬対応に不満をもった傭兵の反乱に約4年程苦しめられることになります。このタイミングでサルデーニャ島がどさくさに紛れてカルタゴ支配から独立し、ローマ傘下に入ることに成功しました。カルタゴの将軍ハミルカルは息子ハンニバルをつれて海外領土拡大を目指してジブラルタル海峡を渡りスペイン支配下におさめました。ハミルカルはスペインの鉱山と農園を巧みに経営して領土を拡大していくことに成功し、以後カルタゴハミルカルが指導者となり、10年がかりでスペイン南部の植民地化に成功しました。

※この基盤が第二次ポエニ戦争勃発時の重要拠点になるのでした。

・この時代のローマは植民市の影響もあり、ギリシア文化への傾倒を進める動きがあり、有識者はこぞってギリシア語やギリシア哲学を学んだとされます。ローマという文明の特殊な所は素直に周囲の文明のすぐれている所を受け入れ、ナンバーワン・オンリーワンであることに拘らないことや周囲とのコミュニケーションに重きを置くところにあったとされます。国内のギリシア熱の高まりを利用して、ローマ帝国ポエニ戦争で獲得したシチリア半島のギリシア都市をうまく取り込むことに成功しました。「法律や道路を共有化し、ローマ市民という権利をもってそれぞれの色を尊重しながらローマ帝国の傘下にしていく」という絶妙なマネジメントシステムを構築していくことがローマの凄い所とされます。兵役や納税の義務は背負わせながらランクをつけて適度に間接マネジメントするということで広大な領土に大規模な反乱を起こさせることなく、存続させる仕組みを構築しました。シチリア半島と同盟を結んだことでシチリア産の小麦がローマ帝国領土内で流通するようになり、ローマの小麦生産の競争力は低下し農地はブドウやオリーブ畑に変容しました。

 

【所感】

・世界史の教科書ではわずか数行で記述されるポエニ戦争前後の動乱期を緻密に記述されており、非常に面白いです。じわじわとローマがイタリア半島および周辺領土を攻略していき、ローマ同盟・ローマ市民法により間接統治していき強大なシステムを構築していく様は圧巻です。カルタゴとの対比として傭兵の活用有無何を賞罰するかなどの違いはギリシアや他の政体とローマの違いということで、マキャベリの「君主論」やクラウゼヴィッツの「戦争論」でも記述があった内容だなーと読みながら感じた次第です。

・俗人化せず、仕組みで問題を解決する・特定個人に極力頼らない(裁量を与えない)ことで長期的に安定的な統治体制(専制政治の危険因子を生まない)という徹底した様は共和政ローマが栄華を誇る時代に一貫して見られる傾向であり、これは現代の組織運営においても同様のことが言えるよなと感じました。「俗人化や人に頼るということ」は瞬間的には楽で当事者は快感を示すものですが、本質的な問題解決にはならず、人間が極力プロセスに介在することはボラティリティをうむということであり人間中心の世界でありながら、極力人間に頼らない運営体制の在り方を模索する(サービスのプロダクト化)と似たようなことが言えると思った次第です。そのエッセンス・絶妙なバランス感覚の模範としてローマの政治体制は参考になるなと感じた次第です。歴史や学問に法則や教訓を見出すとはまさにこのことと思った次第でした。

 

以上となります!